新潟県の八海醸造が醸す「八海山」は、すっきりとした味わいで、飲み飽きない食中酒として全国的に根強い人気を誇ります。

普通酒から純米大吟醸酒まで数多くの種類があり、いつもの晩酌に適した商品から、ギフトにぴったりの高級感のある特別な商品まで、楽しむシーンを選びません。

「八海山」テイスティング9種類

この記事では、「八海山」の商品ラインナップの中から、通年商品として販売されている9種類の銘柄を、SAKETIMES編集部で飲み比べました。それぞれ、どのような味わいなのでしょうか。

  1. 「清酒 八海山」
  2. 「特別本醸造 八海山」
  3. 「大吟醸 八海山」
  4. 「純米大吟醸 八海山」
  5. 「純米大吟醸 八海山 雪室貯蔵三年」
  6. 「純米吟醸 八海山 55%」
  7. 「瓶内二次発酵酒 あわ 八海山」
  8. 「瓶内二次発酵酒 白麹あわ 八海山」
  9. 「八海山 貴醸酒」

「八海山」について

「八海山」の菰樽

「八海山」の名前の由来

銘柄名の由来は、越後三山のひとつに数えられる霊峰・八海山から。新潟県南魚沼市にある八海山は、古くから山岳信仰の対象として仰がれてきました。

「八海山」シリーズには、さまざまなタイプの日本酒があり(普通酒、本醸造酒、純米酒、純米吟醸酒、大吟醸酒、純米大吟醸酒、雪室貯蔵酒、瓶内二次発酵のスパークリング酒、貴醸酒、発泡にごり酒)、いずれも妥協を許さない製法によって造られています。

「八海山」の味わい

「八海山」は、"淡麗旨口"が特徴の、口当たりがすっきりとなめらかな日本酒です。

「八海山」は、軽快でさわやかな飲み口で、香りも強すぎないことから、料理との相性も良く、食中酒にぴったりです。種類によって、おすすめの飲み方は変わってきますが、基本的に、冷や(常温)でも、冷酒でも、燗酒でも楽しめる万能な日本酒です。

「八海山」の製法

八海醸造の酒造りの様子

気候

「八海山」を醸す八海醸造がある新潟県南魚沼市は、日本有数の豪雪地帯。酒蔵は、八海山の裾野に広がる盆地にあり、冬の間は低温多湿という酒造りに最適な気候です。

原料米

「八海山」には、新潟県が産地の五百万石をはじめ、酒米の王様と呼ばれる山田錦や全国の生産量第3位の美山錦などが使われています。

八海醸造の酒造りで特徴的なのが、精米歩合です。精米歩合とは、玄米を精米して表層部を削り残った米の割合を%で表したもの。たとえば、精米歩合60%なら、米を4割削ったことになり、精米割合が低いほど、雑味のないクリアな日本酒ができあがるとされています。

国税庁が定めている日本酒の製法品質表示基準では、精米歩合60%以下の日本酒は「吟醸酒」に分類されます。

しかし、「八海山」シリーズのなかの普通酒「清酒 八海山」は、実は精米歩合60%。つまり、吟醸酒と同等の精米歩合です。本醸造酒や純米吟醸酒では、さらに米を削るため、精米歩合だけをみれば、「八海山」はすべてが吟醸酒クラスと言えるでしょう。

仕込み水

八海醸造では、霊峰・八海山から湧き出る極軟水「雷電様の清水」を酒蔵まで引き込み、仕込み水をもとより、酒造りに関わるすべての製造工程で使用しています。

「雷電様の清水」は、冬の間に八海山系の山々に降り積もった雪が溶けて、地面に染み込み、長い年月を経て湧き出したもので、夏でも冷たく、口あたりが柔らかいのが特徴。1986年には新潟県の名水に指定されました。

醸造技術

「八海山」は、それぞれの商品に対して、大吟醸酒には大吟醸酒の、吟醸酒には吟醸酒の、本醸造酒には本醸造酒の、普通酒には普通酒の目標とする品質基準があり、それらを実現するための商品設計が行われています。

商品設計を活かして酒造りを行うためには、技術的な熟練や高度な品質管理能力が必要。「八海山」の安定したおいしさの秘密の裏には、そんな卓越した醸造技術があります。

たとえば、酒造りで、もっとも大切と言われる麹造りの作業。八海醸造では、目標とする麹を造るためには、機械よりも人間のほうが優れていると考え、どれほど規模が大きくなっても、すべて蔵人による手作業で行っています。

「八海醸造」について

「魚沼の里」の風景

新潟県南魚沼市にある「八海醸造」

「八海醸造」の歴史

「八海山」を主力銘柄とする八海醸造株式会社の創業は1922年(大正11年)。2022年に創業100周年を迎えた、酒蔵の中では比較的若い会社です。

酒蔵経営が本格化したのは、2代目社長・南雲和雄氏の時代から。1980年代に起こった地酒ブームで「淡麗辛口」の新潟県の地酒に注目が集まり、その一角を担う存在として「八海山」の人気が高まります。

当時、新潟県の一部の酒蔵は、高品質な商品を少量生産し希少性を高めるという戦略を取っていましたが、八海醸造は、別の道を進みます。

「日本酒は、日々の生活に寄り添うもの。レギュラーのものほど高品質であるべき」と考え、品質を保ちながら充分な供給量をキープし、価格を抑える方針に舵を切ったのが、3代目社長の南雲二郎氏です。

製造量を確保するために莫大な設備投資が必要でしたが、それでも八海醸造は供給責任を果たし続けた結果、「八海山」は地酒の枠を飛び出し、全国区の銘柄へと推し上がっていきました。

近年の新しい取り組み

八海醸造では、日本酒だけにこだわらず、そこで培った技術を活用した多角的なブランド展開を進め、製麹の技術を活用した麹甘酒「麹だけでつくったあまさけ」、米焼酎の「よろしく千萬あるべし」、日本酒と同じ「雷電様の清水」を使ったクラフトビール「ライディーンビール」などの数々のヒット商品が生まれています。

また、2016年にはウイスキー製造免許を取得して米を使ったウイスキーの製造に挑戦し、その発展形として、2019年には別事業体のグループ会社を設立。北海道ニセコ町に「ニセコ蒸溜所」を建設し、2021年からウイスキーの製造を始めました。

南魚沼市にある本社周辺では、複合施設「魚沼の里」を運営し、発酵のある暮らしを提案。「八海山」を造る第二浩和蔵に、クラフトビールを造る猿倉山ビール醸造所、カフェやベーカリー、雑貨店を通じて、日本酒だけにとどまらないライフスタイルを発信し、その存在価値を高めています。

海外展開については、1995年からアメリカへの輸出を開始し、2018年には、ユダヤ教の食物規定に適合する認証である「コーシャ認証」を取得。現在は、北米やアジアを中心に海外26カ国へ日本酒を輸出しています。

2021年12月、アメリカ・ニューヨーク州ブルックリンにあるSAKE醸造所「Brooklyn Kura(ブルックリン・クラ)」と業務資本提携を結んだことを発表しました。

「八海山」をテイスティング

SAKETIMES編集長・小池潤

通年商品として販売されている9種類の「八海山」について、「唎酒師」の上位資格である「酒匠」を持つSAKETIMES編集長・小池がテイスティングを行いました。

「清酒 八海山」

「清酒 八海山」

味わい

普通酒に見られがちな、ベタベタした香りはありません。穏やかでバランスの良い甘みが印象的です。

口当たりはやわらかく、きれいな印象ですが、途中から徐々にアルコール感が強くなり、終盤は旨味と酸味が優勢。終盤の酸味が少し気になる方は、温めたほうが、旨味や甘みが引き出され、全体のバランスが良くなりそうです。冷やしてキリッと楽しむのも良いですが、常温で、もしくは燗で飲んだほうが魅力が発揮される一本です。

商品情報

  • 商品名:「清酒 八海山」
  • 特定名称:普通酒
  • アルコール度数:15.5度
  • 精米歩合:60%
  • 販売価格(税込):2,125円(1,800mL)、1,015円(720mL)、426円(300mL)
  • 購入リンク:HAKKAISAN ONLINE STORE

「特別本醸造 八海山」

「特別本醸造 八海山」

味わい

甘みの強い吟醸香が主体で、本醸造酒とは思えない香りです。

飲み口はきれいでやわらかく、中盤からやさしい甘みと旨味が感じられ、終盤はちょうど良いアルコール感でドライな印象です。嫌なアルコール感はいっさいありませんでした。温めると、中盤の甘みがより強調されます。米の旨味がはっきりと感じられますが、それでいて透明感のある、バランスの整った一本でした。

商品情報

  • 商品名:「特別本醸造 八海山」
  • 特定名称:特別本醸造酒
  • アルコール度数:15.5%
  • 精米歩合:55%
  • 販売価格(税込):2,609円(1,800mL)、1,257円(720mL)、569円(300mL)
  • 購入リンク:HAKKAISAN ONLINE STORE

「大吟醸 八海山」

「大吟醸 八海山」

味わい

甘い吟醸香が主体ですが、青竹のような爽やかな香りも感じられます。透明感のある、クリアな印象です。

かたすぎず、やわらかすぎずのちょうど良い口当たりで、印象的だったのは余韻のキレ。ピリッとしたアルコール感も多少あります。大吟醸酒らしい洗練された味わいでいながら、全体的に旨味が強く、厚みがありました。

商品情報

  • 商品名:「大吟醸 八海山」
  • 特定名称:大吟醸酒
  • アルコール度数:15.5度
  • 精米歩合:45%
  • 販売価格(税込):3,872円(1,800mL)、1,936円(720mL)、891円(300mL)
  • 購入リンク:HAKKAISAN ONLINE STORE

「純米大吟醸 八海山」

「純米大吟醸 八海山」

味わい

吟醸香はひかえめで、穀物のような香ばしい香りが強く感じられました。

大吟醸酒と比べると、アルコールのピリッとした印象は少ないですが、味わい全体に穀物感が強く、「大吟醸 八海山」よりはボリュームがありました。ただ、一般的な大吟醸酒よりもきれいでクリアな酒質で、余韻はドライでキレの良い味わいでした。

商品情報

  • 商品名:「純米大吟醸 八海山」
  • 特定名称:純米大吟醸酒
  • アルコール度数:15.5度
  • 精米歩合:45%
  • 販売価格(税込):4,257円(1,800mL)、2,134円(720mL)、1,012円(300mL)
  • 購入リンク:HAKKAISAN ONLINE STORE

「純米大吟醸 八海山 雪室貯蔵三年」

「純米大吟醸 八海山 雪室貯蔵三年」

味わい

甘みのある吟醸香と複雑な熟成香が、絶妙なバランスです。

味わいの前半は純米大吟醸酒らしいクリアな印象ですが、中盤以降は熟成酒らしいビターな印象が続きます。吟醸酒と熟成酒の良いとこ取りをした一本です。また、アルコール度数が17度ありますが、アルコール感は特に熟成香によってマスキングされ、嫌味のない味わいです。食中酒としてだけでなく、このお酒のみで充分に楽しめる味わいです。

商品情報

  • 商品名:「純米大吟醸 八海山 雪室貯蔵三年」
  • 特定名称:純米大吟醸酒
  • アルコール度数:17度
  • 精米歩合:50%
  • 販売価格(税込):3,410円(720mL ※専用化粧箱付き)、1,540円(280mL)
  • 購入リンク:HAKKAISAN ONLINE STORE

「純米吟醸 八海山 55%」

「純米吟醸 八海山 55%」

味わい

甘やかな吟醸香とともに、「純米大吟醸 八海山」と同じような、穀物感のある香りもあります。

口当たりから余韻まで、「純米大吟醸 八海山」と同じ系統の酒質ですが、全体的にカジュアルダウンしたような印象で、こちらのほうが日常的に楽しみやすそうです。味わいは淡麗でクリアですが、穀物感のある香りのおかげで、飲みごたえが増しています。

商品情報

  • 商品名:「純米吟醸 八海山 55%」
  • 特定名称:純米吟醸酒
  • アルコール度数:15.5度
  • 精米歩合:55%
  • 販売価格(税込):2,992円(1,800mL)、1,430円(720mL)
  • ※全国の地酒専門店・業務用酒販店のみで販売

「瓶内二次発酵酒 あわ 八海山」

「瓶内二次発酵酒 あわ 八海山」

味わい

ユリを思わせる上品な香りの中に、白玉粉のようなやさしい甘みも感じられます。

泡が非常に細かく、刺激がほど良い口当たりです。甘みと酸味が印象に残る酒質ですが、どちらも主張しすぎず、バランスが良い味わいでした。飲んだ後の余韻もほど良い長さで、心地良く上品な時間を楽しめる一本でした。この美味しさで3,300円は驚きです。

商品情報

  • 商品名:「瓶内二次発酵酒 あわ 八海山」
  • 特定名称:瓶内二次発酵酒
  • アルコール度数:13度
  • 精米歩合:50%
  • 販売価格(税込):3,300円(720mL)、2,090円(360mL)
  • 購入リンク:HAKKAISAN ONLINE STORE

「瓶内二次発酵酒 白麹あわ 八海山」

「瓶内二次発酵酒 白麹あわ 八海山」

味わい

白麹由来の酸味が強い香りです。ただ、嫌な感じではなく、高揚感があります。

「瓶内二次発酵酒 あわ 八海山」と同様に、泡がきめ細やかで飲みやすい口当たりです。酸味の印象が非常に強く、口の中がきゅっと締まるような感覚があります。特にペアリングに力を発揮しそうな、個性の強い味わいでした。食前酒としても良いですが、濃いソースの肉料理などとも好相性だと思います。

商品情報

  • 商品名:「瓶内二次発酵酒 白麹あわ 八海山」
  • 特定名称:瓶内二次発酵酒
  • アルコール度数:12度
  • 精米歩合:50%
  • 販売価格(税込):4,950円(720mL)、2,750円(360mL)
  • 購入リンク:HAKKAISAN ONLINE STORE

「八海山 貴醸酒」

「八海山 貴醸酒」

味わい

香りは酸味の印象が強いですが、あとから、しいたけのような旨味のある香りも感じます。

香りの印象では、ボリュームのある味をイメージしますが、思ったよりも軽い酒質でした。余韻もドライで、貴醸酒の中では、比較的ライトなタイプと言えるでしょう。はちみつやカラメルのような、とろみのある甘みも感じられますが、全体的には透明感のある味わいで、八海山らしさがありました。

商品情報

  • 商品名:「八海山 貴醸酒」
  • 特定名称:貴醸酒
  • アルコール度数:17.5度
  • 精米歩合:60%
  • 販売価格(税込):877円(300mL)
  • 購入リンク:HAKKAISAN ONLINE STORE

9種類の「八海山」を飲み終えて

全国的に知名度の高い「特別本醸造 八海山」のクオリティが非常に高く、テイスティングをした編集部メンバーからは感嘆の声が上がりました。また、「瓶内二次発酵酒 あわ 八海山」も、現在流通しているスパークリング日本酒の中では指折りに美味しく、「八海山」のレベルの高さを感じました。

今回紹介した商品は、八海醸造のオンラインストアをはじめ、全国の酒販店、スーパー、コンビニなどで購入することができます。この機会にさまざまなタイプの「八海山」を試してみてください。

(文:SAKETIMES編集部)

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