SAKETIMES編集部が、いま気になるお酒をテイスティングする新企画「SAKETIMES編集部 注目の一本」。
今月は、群馬県・土田酒造が造る「カン・ツチダ」をご紹介します。
3年越しに発売された、お燗専用の日本酒
「カン・ツチダ」は、瓶詰めをしてから約3年間、常温保管で熟成させたお燗専用の日本酒。土田酒造では、ラベルに表示義務がない乳酸や酵素剤などの発酵補助剤をはじめ、酵母も添加しない"完全無添加"の生酛造りで醸す「シン・ツチダ」を展開していますが、「カン・ツチダ」はこの造りをベースにした燗上がり(温めることで風味が増すこと)仕様という位置付けです。
当初は、2020年の秋に発売を予定していましたが、まだ味わいが硬く、満足のいく仕上がりではなかったことから発売を延期。瓶詰めから3年後となる2022年、ようやく硬さが取れ、まろやかな味わいになったタイミングで発売へと至りました。
原料米には群馬県産の食用米を使い、精米歩合は90%。お米本来の旨みを活かした、ナチュラルな味わいが期待できます。
50℃で膨らむ、豊かな甘みと旨み
それでは、実際にテイスティングをしてみましょう。テイスティングは常温と50℃で行い、印象の違いを比較しました。
色合い
熟成酒らしく、やや黄色みを帯びた色合いです。
香り
まずは常温の香りから確認すると、カラメルのような熟成香を感じますが、決して強すぎることはなく、落ち着いた印象です。また、出汁や干しシイタケを思わせる凝縮感のある旨みとともに、どっしりとした芯の太さを感じます。
50℃まで温度を上げると、芯の太い印象はそのままに、漬物のような、乳酸発酵による酸味のニュアンスも感じました。
味わい
常温では、ピリッとしたアルコールの刺激と、アルコール由来の苦味を感じ、しっかりとした飲みごたえがあります。また、土や稲わらをイメージさせる野性味があり、「完全無添加の生酛造り」と「精米歩合90%」という極めてナチュラルな造りならではの個性が全面に表れています。
50℃で飲むと、常温で感じたアルコールと苦味の印象は和らぎ、香りと同じニュアンスの酸味が立ってきます。さらに、温度を上げたことで隠れていた甘みと旨みが膨らみ、野性味のある味わいと相まって、まるで玄米を食べているかのような満足感があります。どちらの温度も共通して、味わいの余韻は長めです。
合わせる料理としては、どちらの温度も、和食全般との相性は良さそうです。中でも、出汁のようなニュアンスがある常温は筑前煮やおでんなどの料理と、甘みや旨みが出てくる50℃は、魚の煮付けなどの味付けの濃い料理と合わせると、寄り添うようなペアリングが楽しめるでしょう。
「お燗専用」としてふさわしい一本!
完全無添加の生酛造りで醸した、お燗専用の日本酒「カン・ツチダ」。もちろん常温でもおいしくいただけますが、温めた際の味わいの膨らみには目を見張るものがありました。お燗専用と呼ぶのにふさわしい、燗映えする一本に仕上がっています。
また、常温保管をすることで、開栓してからも味わいの変化を楽しむことが可能です。その力強い酒質を活かして、ゆっくりとお酒を育てながら楽しんでみてはいかがでしょうか。
◎商品概要
- 商品名:「カン・ツチダ」
- 原料米:群馬県産飯米
- 精米歩合:90%
- 酒母製法:生酛
- 酵母:酵母無添加
- アルコール分:15%(原酒)
- 価格(税込):1,870円(720mL)
- 購入:土田酒造 公式オンラインショップ
(執筆・編集:SAKETIMES編集部)