お酒が全く飲めない体質の人、もしくはお酒に弱い人のことを「下戸(げこ)」と呼びます。

お酒を嗜む人なら聞いたことがあるかもしれませんが、その語源を知っている人は多くないかもしれません。この記事では、「下戸」の言葉の由来や、お酒に弱くても日本酒を楽しむ方法をご紹介します。

諸説ある「下戸」の語源

お酒があまり飲めない人のことを「下戸(げこ)」、反対に、お酒が好きでたくさん飲む人のことを「上戸(じょうご)」と呼びます。この言葉の語源には諸説ありますが、その中から2つの説を紹介します。

ひとつは、律令制の時代に存在した階級制度がもとになっているとする説です。

律令制では、各家庭の階級がその家族の人数や資産によって、大戸・上戸・中戸・下戸の4つに分かれていました。上戸は上流階級で、下戸は最下級の家を表しています。

婚礼の際、各階級が飲むことのできるお酒の量も、上戸の家では8瓶、下戸の家では2瓶と階級ごとに決められていました。そのことから、お酒をたくさん飲める人のことを「上戸」、飲めない人のことを「下戸」と呼ぶようになったと言われています。

もうひとつは、中国を発祥とする説です。

中国・秦の時代、万里の長城で門番をしている兵士がいました。万里の長城には「上戸」と呼ばれる寒さの厳しい山上の門と、「下戸」と呼ばれる往来の激しい平地の門があります。

彼らの労をねぎらうために、上戸の兵士には体を温めるお酒を、下戸の兵士には疲れを癒やす甘いものを配ったそうです。それが転じて、現在の「上戸」「下戸」の意味になったとされています。

「上戸」「下戸」の由来についてはほかにも説がありますが、いずれにしても歴史との深い関連がある言葉であることは間違いなさそうですね。

飲める「左党」と飲めない「右党」

お酒を多く飲める人の別称として、「左利き」や「左党(さとう)」、飲めない人を「右党(うとう)」と呼ぶこともあります。

江戸時代、大工や鉱夫が右手に槌(つち)を、左手にノミを持つことから、右手のことを「槌手(つちて)」、左手のことを「ノミ手」と言いました。この「ノミ手」が「飲み手」と同じ発音だったため、ダジャレのような感覚で、お酒飲みのことを「左利き」と呼ぶようになりました。「左党」もその派生語とされています。

そして「左党」という言葉が生まれたあと、お酒が飲めない人のことを、左党の反対という意味で「右党」と呼ぶようになります。

お酒に弱い人のための、日本酒の楽しみ方

お酒が飲める人とほとんど飲めない人、まったく飲めない人が混在することは、遺伝的な体質の違いによるものであると医学的に証明されています。

お酒は無理をして飲むものではありませんが、「今日はちょっと飲みたい」と思う日があるのも事実。そんなときに役に立つ情報を紹介します。

和らぎ水

お酒といっしょに飲む水のことを「和らぎ水(やわらぎみず)」と呼び、飲んだ酒量に対してやや多い量の水を飲むのが理想と言われています。

橘倉酒造・井戸水

より楽しく、より健康にお酒を楽しむには、アルコール分解や排泄によって失われた水分を補給することが重要です。アルコールには揮発性があるため、水分が残りづらく、お酒を摂取した身体はカラカラの状態。実はお酒をいくら飲んでも、充分な量の水分を摂取したことにはなりません。

和らぎ水を飲むことによって、軽度の脱水状態にある身体に水分を補給することができます。また、水分を摂取することでアルコールの吸収が緩やかになり、自身がどのくらい酔っているのかを把握しながら飲むことができるため、飲み過ぎの防止にもつながります。

水を飲むことで、ひと呼吸おけるのもポイント。身体に負担をかけずお酒を楽しむためには、和らぎ水はとても大事です。

徳利とお猪口

日本酒には徳利とお猪口を使ってお酒を嗜む文化があります。大きなグラスで注文するのではなく、徳利で注文すると、各々の適量でゆっくりと楽しむことができます。

日本酒テイストのノンアルコール飲料

月桂冠(京都府)が販売している「スペシャルフリー」のような日本酒テイストのノンアルコール飲料であれば、あたかも日本酒を飲んでるかのような味わいを楽しむことができます。

また、近年はビールと同程度のアルコール度数(6%ほど)の低アルコール日本酒や、ロックで楽しむ日本酒も登場していますので、このような新ジャンルの日本酒を試してみるのもよいかもしれません。

サプリメント

肝臓をサポートし、アルコールの分解を助けるサプリメントを服用するのも一手です。しかし、サプリメントも万能ではなく、効果が一時的なものであること、体質によっては効果がないことにも気をつけなければなりません。

コンビニで買える二日酔い対策のサプリ

「日本酒好き」というと飲める人と思われることもあるかもしれませんが、お酒の強さも楽しみ方も人それぞれ。

実は日本酒業界にも「下戸」の人は多くいます。酒造りの神様と称される農口尚彦さんもそのひとり。お酒を3口も飲めば顔が赤くなってしまうのだとか。

アルコールに対しての強さは、遺伝体質のほか、年齢や性別、体格、体調など様々な要因で決まるため、自分にあったお酒との付き合い方を探してみてください。

(文/SAKETIMES編集部)

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