毎晩のようにお酒を楽しんでいる人も多いと思いますが、日本酒は口当たりが良くてついつい飲み過ぎてしまいますね。最近では飲み口の柔らかい香り豊かな日本酒も増えていることから、日本酒好きを公言する女性も増えています。

そうなると気になるのが「日本酒はカロリーが高いから太りやすい」「たくさん飲み続けることで、お酒に強くなれる」「産前産後は飲酒を避けなければならない」といった、日常生活に関わる日本酒の噂です。

医学的な観点からみると実際どうなのか、『酒好き医師が教える最高の飲み方』(日経BP社刊)を監修した日本酒好きの医師・浅部伸一先生に真偽を確かめてみました。

浅部伸一先生(自治医科大学付属さいたま医療センター)

年をとると、お酒に弱くなる?

子どものころに苦手でも大人になると好きになる食べ物があるように、年齢を重ねていくと、味覚の変化が起こります。アルコールに弱くなったり、飲酒量が減ったりするのもそのひとつ。なぜ、味覚やアルコール耐性に変化が起きるのでしょうか。

「年齢による肉体の衰えが大きな要因ではないかと言われています。味覚がなぜ変わるのか、まだはっきりと原因はわかっていません。よく言われるのが、年齢によって味覚が鈍くなるということ。そのため、よりはっきりとした味付けを好む傾向になります」と、浅部先生。

以前の記事でもお伝えしたように、お酒に対する耐性については、飲み続けることで肝臓のアルコール処理能力が高くなって、ある程度強くなるという人もいるようです。しかし、年齢を重ねると、肝臓の処理能力が総じて落ちるため、耐性は弱くなります。

「私がよく話すのは、お酒に弱くなったと思い始めたら、単なる思い過ごしではなく、それはもう事実なんだと考えてほしいということ。弱くなるのは当たり前のことですから。現状に合わせて、お酒の量を考えていかないといけません」

麹や酒粕は身体に良い?

米麹

美容や健康の面で身体に良いとされている麹や酒粕。それらの成分が多く含まれている日本酒を飲んでいれば、老化も抑えられるのでしょうか。

発酵食品のもつポテンシャルに期待したいと言いつつも、「どう身体に良い結果を与えるのか、私が知る限りでは、科学的にはっきりと示されていませんね」と、浅部先生。

麹といっても、米麹の状態と日本酒になってからではその作用が変わってきます。日本酒が健康に良いかどうか判断するには、まだ情報が不足しているそうです。

科学的に証明することの難しさ

世の中には多くの健康食品がありますが、本当にそれが身体に良いものなのか、科学的にはわからないものがほとんどだそうです。なぜなら、判断するには、実験を重ねてデータを集める必要があるからです。

薬を開発する場合は、数百人単位で薬を服用するグループと服用しないグループに分けて、長い時間をかけて経過を観察します。薬の服用による変化が見えなければ、効能を断言することはできません。

同様に「日本酒を飲む人と焼酎を飲む人で、どちらが健康に良いか」という問いを立てて検証しようとしても、それにはまず、対象となる数百人を10~20年のスパンで経過観察しないといけません。しかもその期間中は、飲酒以外の食事や生活サイクルといった条件をすべて同じにしないと正確なデータは得られませんから、実現するのがとても難しいのです。

そのため「日本酒と焼酎のどちらが健康に良いか」を検証するためには、聞き取り調査が用いられます。

「日本酒と焼酎について、飲酒量や頻度はどれぐらいですか」という質問を何万人単位で聞くのが、現在行われている研究のやり方です。そのなかで、わかりやすい差異がたまに出ることがありますが、それが本当に日本酒と焼酎の違いによるものとは言いにくいのです。

お酒の効用を科学的にはっきりと証明するのは難しいですが、それでも「可能性がないわけじゃない」と浅部先生。将来、ポジティブな結果が示されることを期待しましょう。

◎参考文献

  • 『酒好き医師が教える最高の飲み方』(著者:葉石かおり、監修:浅部伸一/日経BP社)
  • 最新医学のエビデンスをもとに、お酒の正しい飲み方を指南した一冊。お酒の楽しみ方はもちろん、健康や美容との関係など、お酒を飲む人が抱く素朴な疑問に回答を示し、多くの読者から高い評価を得ている。

(取材協力/葉石かおり)
(文/乃木章)

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