2016年に公開された映画『カンパイ!世界が恋する日本酒』。日本酒に魅せられた3人のアウトサイダーを描いたドキュメンタリーとして、大きな反響を呼びました。

その第2弾『カンパイ!日本酒に恋した女たち』が、4月27日に公開されます。スポットライトが当たるのは、かつて女人禁制とされた時代もあった日本酒の世界で活躍する3人の女性。

1人目は「富久長」を醸す広島県・今田酒造本店の女性杜氏・今田美穂さん。2人目はペアリングを追求し業界に新たな風を吹かせている日本酒バー「GEM by moto」の店長・千葉麻里絵さん。そして3人目はニュージーランド出身の日本酒コンサルタントであるレベッカ・ウィルソンライさん。

小西未来監督とメインキャストの3人

(左から順に)小西未来監督、レベッカ・ウィルソンライさん、千葉麻里絵さん、今田美穂さん

作品を手がけたのは、ロサンゼルス在住の映画監督・小西未来さんです。なぜ、日本酒ドキュメンタリーを撮り続けるのか。映画の見どころとあわせて、小西監督の考える日本酒の魅力を伺いました。

女性を通して、日本酒の魅力を描く

─ はじめに、日本酒の映画を撮ろうと思ったきっかけを教えてください。

小西監督:日本の大学を出た後に渡米し、南カリフォルニア大学で映画制作を学びました。卒業後は映画ライターとして活動していましたが、撮りたい気持ちはずっともったままでした。

そして2010年、もういちど本腰を入れて映像を作ろうと決意したんです。当時はフードドキュメンタリーがブームだったので、日本食をテーマにしたいと思っていました。

小西未来監督

そんな時、南部美人の久慈浩介さんがたまたまロサンゼルスに来ていて、知人を通じて会いました。日本人離れしたコミュニケーション能力に圧倒されるのと同時に、そんな久慈さんが活躍している日本酒業界に興味をもちました。

─ 今作はなぜ「女性」をテーマとしたのでしょうか。

小西監督:アメリカ在住の日本人として、同じ"アウトサイダー"である人物を描くことで、多くの方々が日本酒に共感してくれるのではないかと考え、前作では「異文化に挑戦している人物」をテーマとしてキャストを選びました。

結果的にまとまりのある作品に仕上がったので、もし続編があるなら、さらに異なる観点でアウトサイダーを描きたいと思っていたんです。

「カンパイ!世界が恋する日本酒」と「カンパイ!日本酒に恋した女たち」のポスター

(左)今作「カンパイ!日本酒に恋した女たち」、(右)前作「カンパイ!世界が恋する日本酒」

そこで思いついたのが「女性」でした。かつては蔵に入ることさえ禁じられていた女性たちが、現在では日本酒業界で広く活躍している。その活動や挑戦を通じて、日本酒の魅力を描こうと思いました。

3人に共通する「芯の強さ」

─ どのような基準で3名を選んだのでしょうか。

小西監督:女性に楽しんでもらえる映画にしたかった。そこで、男目線ではなく、日本酒業界に詳しい女性に候補者を推薦してもらいました。

造り手として、女性杜氏の先駆者である今田さん。消費者に近い人物として「GEM by moto」の千葉さん。そして、日本酒コンサルタントであるレベッカさんを選びました。それぞれ異なる個性をもった人が集まり、前作とは違った世界を描くことができました。

─ 3名はなぜ、日本酒業界の最前線で活躍しているのでしょうか。

小西監督:"逆境に強い"からではないでしょうか。撮影前までは「男性が中心的な日本酒業界で活躍している女性たちは、さぞかし苦労しているのだろう」と思っていました。しかし、ネガティブなエピソードは出てこなかったんです。

きっと相当な苦労をしたに違いないのですが、彼女たちには苦労を表に出さない芯の強さや、それを跳ね返せるしなやかさがある。だからこそ、最前線で活躍しているのだと思います。

Gem by motoで接客をする千葉麻理絵さんの写真

─ 今作で大事にした点を教えてください。

小西監督:"なにも要求しない"ことですね。自然な描写を引き出すために、彼女たちの行動に合わせるよう意識しました。造りのカットは撮影のために用意されたものではなく、実際の現場を撮影しています。他の作品と違ってテイク2はお願いできませんし、時間にも限りがある。リアルな現場を写しているので、ありのままの姿を伝えられていると思います。

日本酒は可能性に満ちあふれている

─ 撮影を通して、日本酒業界について考えたことはありますか。

小西監督:日本酒はたくさんのこだわりと手間をかけて造られているのだから、造り手のみなさんがより豊かになれるビジネスになるべき。そのためにも、近年注目されつつあるプレミアム日本酒の市場が広がってほしいですね。そうなれば、さらに幅広い層に日本酒を楽しんでもらえますし、日本酒業界がより豊かになるのではないでしょうか。

─ 女性の存在が日本酒にどのような影響を与えると思いますか。

小西監督:ペアリングが盛り上がっているのは、女性の存在が大きいと感じてます。もし男性だけが飲んでいたら、日本酒だけを楽しむような飲み方が中心となっていたかもしれない。柔軟な思考の女性がいることで、より自由な可能性が生まれるきっかけになっていると思います。

また、今田さんの蔵では女性の造り手が増えたと聞きます。肉体労働のイメージが強い酒造りですが、近年は機械のサポートもあり、女性の参入するハードルが低くなってきている。業界を代表する女性杜氏である今田さんの存在が際立つことで、女性がさらに働きやすくなるのではないでしょうか。

─ 日本酒のおもしろさとは、どんな点だと思いますか。

小西監督:柔軟性の高さです。温度や酒器、合わせる食材など、さまざまな要素が複雑に絡み合って日本酒の味わいが形成される。そこにおもしろさを感じますね。日本酒はまだまだ可能性に満ちあふれていると思います。

私自身も映画制作を通じて、日本酒の魅力を肌で感じました。これまでの作品も未来の作品も、日本酒を好きになるきっかけになってくれたらうれしいです。

「カンパイ!」は、学びの軌跡

「カンパイ!」シリーズが、日本酒を好きになるきっかけになってほしい。そう語る小西監督も、映画を通して日本酒が好きになったひとり。このシリーズは、小西監督がこれまで日本酒を学んできた軌跡とも言えるかもしれません。回を重ねるごとに日本酒に魅せられていく、そんな小西監督の次回作にも期待が高まります。

小西未来監督

『カンパイ!日本酒に恋した女たち』は4月27日の公開。ぜひ、劇場に足を運んでみてください。

(文/熊澤 淳太)

この記事を読んだ人はこちらの記事も読んでいます