2020年7月3日から数日間、熊本県を中心に九州や中部地方を襲った記録的な豪雨は、河川の氾濫や土砂災害を引き起こし、各地に大きな爪痕を残しました。

熊本県玉名郡和水町にある花の香酒造と、大分県玖珠郡九重町の八鹿酒造は、幸いにも死傷者はいなかったものの、浸水によって大きな被害を受けました。

現在はどちらも営業を再開し、復旧作業と出荷を平行して進めています。

熊本県・花の香酒造の被害状況と今後について

花の香酒造の6代目蔵元・神田清隆さんに現状と今後についてうかがいました。

─ 被害状況と、今後の製造や出荷にどのような影響があるのかを教えてください。

神田さん:浸水の被害がひどく、段ボールなどの資材から商品、お米までが水に浸かりました。売り場の冷蔵庫、漆喰壁からは異臭がします。また、道路が崩落し、作業動線を変更することになりました。

現在、出荷は通常どおりに復旧しましたが、機器類の洗浄、殺菌、汚染対策、浸水した麹室の張り替えなどはこれからで、製造のスタートが遅れる可能性が考えられます。

花の香酒造の被害

蔵内よりも被害が大きく、心配しているのが田んぼです。

私たちは今年、自社で2町5反を作付しています。和水町での作付面積は40町歩ほどありますが、砂利や泥が流れ込み、一部では水路も崩れているため、今季の収穫量は確実に減ります。来期の収穫量に影響が出ないよう、来年の田植えまでに復旧させたいと思います。

─ 被害のあった建物や設備は、復旧の目処が立っていますか。

神田さん:断熱材のある壁を剥がし、確認をしながらの復旧になると思います。製造に使用する複雑な機器類以外は、洗浄殺菌して使えるので大方の目処がたっていますが、浄化槽の汚水が流れ出た臭いがとれない部分があるので対応を検討しています。

花の香酒造の清掃作業

─ どのようなご支援が望ましいでしょうか。

神田さん:今後、浸水したお米の廃棄、機器類の修理、麹室の張り替えなどを進めていきますが、蔵内の被害は保険でどうにかなると思います。しかし、田んぼ周辺の崖崩れの復旧は賄いきれないため、その一画の農家さんと協力して対応しなくてはなりません。

現在、多くの支援をいただいていまして、弊社としては、売上の一部をその共有区画の復旧費用として農家支援に寄付したいと考えています。

人吉球磨地方を中心に熊本県南部では甚大な被害が出ており、「球磨焼酎」をはじめ、被災地のお酒を飲んで応援していただけるとうれしいです。

◎「花の香酒造」取り扱い店舗一覧はこちら

大分県・八鹿酒造の被害状況と今後について

八鹿酒造の代表取締役専務・麻生益寛さんに現状と今後についてうかがいました。

─ 被害状況と復旧の目処について教えてください。

麻生さん:敷地・蔵が浸水し、泥を被りました。焼酎蒸留機、製麴機の故障、瓶やラベル、カートンなどの水濡れ、焼酎貯蔵樽の浸水や原料麦の水没、停電による焼酎モロミの腐造、一部製品の水濡れなどの被害がありましたが、幸いな事に人命には被害はありませんでした。

八鹿酒造の被害

近日中には大半の設備が復旧する目途となっております。

しかしながら完全復旧というわけではなく、場内の橋や浄化槽、一部の機会が壊れているため、ある程度やりくりしながら業務を回していく感じです。

また一部、熟成を目的で清酒・焼酎を山のトンネルで貯蔵していたのですが、そこが完全に冠水し、一升瓶の純米大吟醸が約300本、水に浸かりました。いずれも10年以上寝かせていたものになります。

酒質のチェックはこれからになりますが、ビニール袋に1本ずつ入れていたこともあり、おそらく大丈夫だと思います。

─ 出荷・販売に関する予定や今後の展望について、お聞かせください。

麻生さん:出荷等については「絶対に欠品させない!」という想いで社員一同復旧に努めました。

清酒は造りの時期ではなかったのでほぼ影響はありませんでしたが、awa酒のデゴルジュマン(澱引き)など一部作業が止まっています。

まだ構想段階ですが、停電の影響で醪日数が予定より超えた焼酎が2本ほどあり、これがおもしろい味わいになってきたので「感謝の復興焼酎」として商品化していきたいと考えています。

復旧しつつある八鹿酒造

復旧作業が進む現在の八鹿酒造

─ どのようなご支援が望ましいでしょうか。

麻生さん:九州に心を寄せる意味も込めて、飲んで応援をしていただければ幸いです。

まだまだボランティア等の力をお借りしながらの復旧が続きます。地元に平穏な日々が訪れるのはまだ先だということもあり、県内での消費が落ち込むのは目に見えております。

ぜひとも各地で熊本、大分のお酒を飲んでいただけると幸いです。

◎「八鹿酒造」のオンラインショップはこちら

飲んで応援しよう!

取材にご協力いただいた2蔵のほかにも、熊本県人吉市に蔵を構える球磨焼酎の酒蔵など、壊滅的な被害を受けたとの情報があります。

新型コロナウイルス感染症の影響もあり、ボランティア等に赴くのは難しい状況ですが、1日でも早い復旧を願って、ぜひ飲んで応援しましょう。

(文/SAKETIMES編集部)

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