もっとも多くの酒蔵がある新潟県。その中でも、朝日酒造の「久保田」は、県を代表する銘柄のひとつとして全国的に知られています。
特に、淡麗辛口と表現されるキレの良い味わいは、食中酒として抜群。1985年の発売当初から続く「久保田 千寿」「久保田 百寿」は「久保田」の定番商品として現在でも多くのファンを抱えていますが、近年は、スパークリング日本酒やにごり酒など、これまでになかった「久保田」の提案にも挑戦しています。
2023年5月21日、そんな「久保田」は発売38周年を迎えます。これまで、「久保田」がファンの人生をどのように彩ってきたのか、「久保田」を愛飲するファンのみなさんに話を聞きました。
特別な日に飲みたい「萬寿」
小川栄智さん(50歳/男性/新潟県在住)
最初に話を伺ったのは、かつては酒粕すら苦手だったという小川さん。20歳の時に上司から勧められて口にした「久保田 萬寿」に「こんなに美味しい日本酒があるのか」と衝撃を受けて以来、「久保田」の大ファンとのこと。特に「萬寿」は、普段はあえて飲まず、とっておきの時にだけ飲むのだそうです。
「『久保田』との出会いは、上司に勧められた『萬寿』でした。仕事終わりに『美味しいお酒を飲みに行こう』とごちそうになったんです。日本酒独特の香りが苦手だったんですが、『萬寿』の入ったおちょこを顔に近づけると、それまで自分が知っていた日本酒とは違う雰囲気を感じたことを覚えています。口にすると、フルーティーな香りがふわっと広がって、日本酒のイメージががらっと変わりました。おかげで他の日本酒も飲めるようになったんですよ」
「好きな『久保田』は、やっぱり『萬寿』です。ただ、普段はあえて飲みません。大きな仕事がひと段落した時や県外の友人が遊びに来た時など、特別な日に飲んでいます。
特に思い出に残っているのは、独立祝いの時。私はいま会社を経営しているんですが、同じ時期に独立した同僚がいたんです。当時、2人で景気づけをしようと、奮発して日本料理屋へ行きました。まだ売上はほとんどなく、それでも夢や希望はたくさんあって、こんな時だからこそ思い切って『萬寿』で乾杯しようと。
脂がのったまぐろの刺身と『萬寿』の組み合わせは最高でした。『萬寿』を口の中に入れると、少しずつ温度が上がって、香りが変わってくるんです。それを噛みしめるように味わって、お互いにがんばろうとエールを送り合いました。あれから15年が経ちましたが、おかげさまで2人とも順調に経営をしています」
「ファンミーティングや座談会など、『久保田』のイベントにはよく参加しています。朝日酒造のみなさんと接すると『久保田』への強い愛を感じるんです。きっと普段から『久保田』を飲んでいるんだろうなと。
私にとっては、もう『萬寿』のない人生は考えられません。こんなふうに人生をともにできる日本酒があるなんて、本当に幸せです。朝日酒造には、これからも良い日本酒を造り続けていってほしいです」
人生の半分以上を「久保田」とともに
峯岸正樹さん(48歳/男性/茨城県在住)
続いては、小川さんと同じく20歳の時に「久保田」に出会ったという峯岸さん。料理が好きで、地元の新鮮な魚介類を使った料理と「久保田」の写真をよくSNSに投稿しています。毎日の晩酌には「千寿」、特別な日には「萬寿」などと、常に5種類ほどの「久保田」を家に置いているそうです。
「20歳の時、職場の飲み会で初めて『萬寿』を飲みました。千葉県の銚子市で働いていたので、当時の上司が美味しい海鮮や日本酒をよくごちそうしてくれたんです。職場の近くに『久保田』を扱う酒販店さんがあり、交流もあったので、職場の仲間との飲み会にはいつも『萬寿』。初めて出会った日本酒が『久保田』だったので、ずっとそばにある感覚ですね」
「職場の飲み会の定番は『萬寿』ですが、普段は『千寿』を愛飲しています。ほぼ毎日飲んでいるので、懐にやさしい『千寿』がありがたいんです。『千寿』はどんな料理にも合う、素晴らしい食中酒だと思います。
料理が好きで、新鮮な魚介類に恵まれている土地ということもあって、刺身やなめろう、一夜干しなどの魚料理といっしょに楽しむことが多いですね。日本酒用の冷蔵庫に、今は『久保田』を5種類ほどストックしていますよ。いつもよりもちょっと良い魚が手に入ったから『萬寿』にしようかなどと、飲み比べをするのが楽しいんです」
「好きが高じて、結婚式では『洗心(※)』を各テーブルに2本ずつ出しました。職場の近くの酒販店さんに協力していただいて、山ほど納品していただきました(笑)。
結婚式だけでなく、過去の写真を見返すと、人生の節目にはほぼ必ず『洗心』が写っています。やっぱり、楽しい会には日本酒が欠かせません。私の人生、みんなで集まる時には、そこに必ず、朝日酒造の日本酒があるんです」
※「久保田」シリーズとは異なる朝日酒造の銘柄
酒蔵見学を通して、ますます愛情が深まった
小池なぎささん(58歳/女性/兵庫県在住)
小池なぎささんは、ご夫妻で「久保田」を楽しんでいます。飲むばかりではなく、オンライン飲み会や試飲販売など、イベントにも積極的に参加されています。先日は、兵庫県から新潟県まで足を伸ばし、念願だったという酒蔵見学にも行きました。
「私はあまり日本酒を飲めないんです。以前はクラフトビールやワインにハマっていたのですが、たまたまお店でいただいた『久保田 翠寿』をきっかけに日本酒を飲むようになりました。日本酒独特の香りが苦手だった私でも、なぜか『久保田』なら飲めるんですよ。ビールとワインばかりだった家での晩酌が、それからは日本酒もよく飲むようになりました」
「『久保田』にハマってから、オンライン飲み会はもう3回も参加しました。料理が好きなので、各都道府県の名物と『久保田』をペアリングする『久保田ご当地グルメ部』の企画が特に楽しいです。普段の食卓でも、『久保田』に合わせた献立を考えることもあります。
先日、ようやく酒蔵見学に行くことができて、本当に楽しかったです。兵庫県から新潟県まで電車で出かけて、2人で本当にたくさん飲みました。変な言い方かもしれませんが、いつも飲んでいる『久保田』は本当に良いところで生まれたんだなぁと、なんだか親しい友人の実家へ遊びに行ったような感覚になりました(笑)。
酒蔵見学を通して、朝日酒造のみなさんが『久保田』を愛していることが伝わってきて、本当に丁寧に造られているんだと実感しました。『久保田』がますます大好きになりましたよ」
また、なぎささんの夫である孝さんも、以下のように話してくれました。
「ぼくらはいつも、食事をメインにお酒を飲んでいるので、特に『百寿』と『久保田 碧寿』は食中酒として重宝しています。華やかな香りがありつつも、しっかりとした日本酒らしい味わいが感じられるところが好きです。いろいろな『久保田』を飲んできましたが、まだ飲んでいないものもたくさんあります。いずれは『久保田』のラインナップをすべて飲んでみたいですね。
先日の酒蔵見学で、朝日酒造のみなさんは『日本酒という生き物を育てている』のだと感じました。真摯な姿勢を変えずに、これからも生きた酒造りを続けてほしいです」
5/21で「久保田」は発売38周年!
いつもの晩酌に寄り添ってくれる「千寿」、ハレの日をさらに特別なものにしてくれる「萬寿」など。3名のファンに話をお伺いして、「久保田」が人生のさまざまなシーンを彩ってくれる銘柄であることがわかりました。
また、3名が共通して話していたのは、この「久保田」を造っている人の魅力。ひとりのファンとして日本酒を愛し、ひとりの造り手として日本酒に真摯に向き合う姿勢があるからこそ、「久保田」は多くのファンを魅了するかもしれません。
来る5/21(日)に、「久保田」は発売38周年を迎えます。これからも、「久保田」はさまざまな人生のさまざまなシーンを彩っていくことでしょう。
(文:藪内久美子/編集:SAKETIMES)