白鶴酒造のお酒といえば、国内売り上げNo.1の日本酒ブランド「まる」を筆頭に、手頃な価格で楽しめる日常酒のイメージを持つ方が多いかもしれません。その一方で、720mlで1万円を超えるプレミアム商品も展開しています。それが「超特撰 白鶴 天空 袋吊り 純米大吟醸」シリーズです。

「白鶴酒造の頂点を極める」という意味合いで名付けられたこのお酒は、精米歩合38%まで磨いた最上級の山田錦と白鶴錦を使用し、袋吊りで搾られた純米大吟醸。白鶴酒造を象徴する商品です。

持てる限りの技術を注ぎ込み、人の手で丹念に造られている「超特撰 白鶴 天空 袋吊り 純米大吟醸」。今回は、そのこだわりに迫ります。

手間を惜しまない、こだわりの造り

白鶴酒造「天空」の麹造り

2019年11月半ばのある日。白鶴酒造本社内の本店二号蔵工場では、今季初めてとなる「超特撰 白鶴 天空 袋吊り 純米大吟醸」(※以降、「天空」と表記)の仕込みが行われていました。麹室に集まった蔵人たちは一様に半袖姿。室温が40度にもなる麹室での作業は、暑さとの戦いです。

白鶴酒造「天空」の麹造り

始業とともに始まったのは「切返し」。麹菌が繁殖しはじめた蒸米は乾燥して塊になりやすいため、温度や水分量を均一にするために蒸米をほぐす作業です。

多くの場合、手で揉んでダマになった蒸米をバラバラにするのですが、ここではすべての蒸米をふるいにかけ、わずかな塊も見逃さない徹底ぶり。「天空」を名乗るためには、少しの妥協も許さない。そんな緊張感も感じられます。

白鶴酒造「天空」の麹造り

その後、麹蓋の積み替え作業へ。麹菌の繁殖した蒸米を木製の小箱に取り分けて管理する蓋麹法では、温度のムラをなくすため、数時間ごとに麹蓋の上下を入れ替えなければなりません。温度を測り、麹の状態を見極めて決めた位置が麹の出来栄えを左右するのです。

白鶴酒造「天空」の麹造り

仕舞仕事になると、麹作りもいよいよ大詰めです。麹を再び撹拌して水分を飛ばし、さらに表面積を広げて、麹蓋に盛った麹の温度を下げていきます。木箱の四隅に残った麹の一粒まで、丁寧に刷毛でかき集める蔵人たち。一粒も無駄にしたくないという気合をひしひしと感じました。

白鶴酒造「天空」の麹造り

こうして完成した麹は見事な突き破精で、麹菌が蒸米の中心に向かって食い込んでいます。その姿はまさしく花が咲いたような仕上がり。惜しみない手間が生んだ麹が、「天空」として羽ばたいていくのです。

"ベストな選択の積み重ね"から生まれる「天空」

白鶴酒造 本店二号蔵工場長の小佐光浩さん

白鶴酒造 本店二号蔵工場長の小佐光浩さん

一連の作業を取り仕切るのは、本店二号蔵の工場長であり杜氏の小佐光浩さん。18歳で白鶴酒造に入社後、造り一筋で歩んできたベテランです。「天空」シリーズが発売された当初より、「天空 白鶴錦」の醸造に携わってきました。

「『天空』に使われる米には山田錦と白鶴錦がありますが、この2つの米の違いを引き出すような造りを意識しています。一番最高の技術で一番最高の味を出すという、鑑評会出品酒と同じ考え方で造っているんです」

白鶴錦の田んぼ

山田錦と白鶴錦は、幻の酒米「山田穂」を母に、酒造りに適した「渡船」を父に持つ兄弟品種。白鶴錦は「白鶴」の名を冠する通り、「山田錦に優るとも劣らない米を生み出す」をコンセプトとして白鶴酒造が独自に開発した酒米です。

できあがった山田錦と白鶴錦の「天空」を飲み比べると、山田錦はキレと後味がよく、白鶴錦はやわらかくて余韻が残る味わいなのだとか。

とはいえ、「毎年同じ造りをしているわけではないんですよ」と小佐さんはきっぱり。お米の出来栄えや状態に合わせ、「去年よりもいいお酒を」と、造りも変えているといいます。

種麹の種類を変えることもあれば、酵母を変えることも。シーズン中にさまざまな試行錯誤を重ね、ブラッシュアップしていくのが小佐さん流。手造りにこだわるのも、ほんの少しのさじ加減を見逃さないためです。

「各工程がベストな選択の積み重ねであるように、ひとつの方法にとらわれずにやっています。『これが最高!』という造りはありませんから、我々も常に勉強です」

白鶴酒造「天空」の洗米の様子

その上で、もっとも気を遣うのは原料処理。ここを疎かにしては、いいお酒はできません。

小佐さんへの取材の前に、洗米と浸漬の作業を見せてもらいました。お米は、割れないように細心の注意を払い、すべてを手洗い。状態を見て、洗う時間は都度変更するそうです。

白鶴酒造の蔵内部に掲げられたホワイトボード

その後は秒単位で時間を計りながら浸漬。このとき作業場の脇に置かれたホワイトボードに、"ピタリ賞"なるワードが書かれていることに気がつきました。

すると、ストップウォッチとにらめっこしながら、吸水させて重さを量っていた蔵人が、ある数字の時に「おお!」と歓声を上げます。また次の時は「ああ!」と少し残念そうな声。どうやら"ピタリ賞"とは、目標の数値と同じ吸水率を出せた人に贈られる賞のようです。

白鶴酒造 本店二号蔵工場長の小佐光浩さん

小佐さんはなぜそんなルールを作ったのでしょうか。

「洗米と浸漬の作業は、正直しんどいんですよ。なにか目標や楽しみが必要だと思って"ピタリ賞"を作りました。今期の「天空」は7回の造りがありますが、その中で何回合わせられたか、最後に回数が多かった蔵人を表彰するんです。単調な作業でもやりがいや誇りを持ってほしいし、単純に楽しみにしてもらってもいい。若い蔵人には、その中で技術も身につけていってもらえたらと思っています」

ちょっとしたゲーム感覚が現場の空気を和らげ、チームワークを確かなものにし、その一方で原料処理の大切さを身をもって知る機会にもなる。現場で常に酒造りと向き合ってきた、小佐さんならではのアイデアです。

「精米歩合38%という貴重な米を預かっていますから、無駄にはできません。『こんなもんでええやろ』という気持ちは造りに移ってしまうんです。特別な日に飲むお客さんが多いお酒ですから、納得していただくためにも、『毎回が勝負』という気持ちで取り組んでいます」

特別なひとときを彩る一本として

酒販店にとって「天空」はどのような商品なのでしょうか。株式会社松屋 銀座本店の和洋酒売り場を訪ね、ギフト係の三村洸平さんにお話を伺いました。

松屋銀座 和洋酒売場の三村洸平さん

松屋銀座 和洋酒売場の三村洸平さん

「「天空」の取り扱いをはじめたのは、ちょうど1年ほど前。売り場のスタッフ全員で試飲し、『これは売れるね』と意見が一致したんです。ベテランのスタッフも『大手はやはりすごい技術を持っているな』と感激していたのを覚えています」

全国各地の銘酒を取り揃える松屋銀座本店のスタッフをも唸らせた「天空」。三村さんはその味わいについて、次のように話します。

「いわゆる精米歩合38%の大吟醸となると、どの蔵でも最高峰のラインナップで、鑑評会向けのお酒が多い印象です。香りがきれいで上品な飲み口なのですが、一方で、味が均一化してしまうところもあります。

ですが、「天空」シリーズは味に立体感があり、甘みや旨み、酸味、苦味など、特徴がはっきりでていると感じました。同じ規格のお酒に比べてメリハリがあるので、日本酒好きのお客様にも自信を持っておすすめできます」

松屋銀座の和洋酒売場

銀座という場所柄、外国からのお客様も多く、幅広い年齢層が訪れる松屋銀座本店。中でも目立つのはギフトの需要だそう。

還暦など身内の長寿のお祝いはもちろん、上司の昇進祝い、お世話になった方への就任祝いなど用途もさまざま。鶴が舞うラベルデザインに加え、伸びやかな首のラインを意識したという独特の瓶型が洗練された雰囲気を醸し出す「天空」には、確かにそんなおめでたいシーンが似合います。

「白鶴というブランドへの信頼感もありますし、大切な方への贈り物としては最適ではないでしょうか」と、三村さんも太鼓判。

「ハレの日に特別感のある日本酒を求めて来店するお客様」という百貨店ならではのニーズに、「天空」のコンセプトは見事に合致しています。

白鶴酒造「超特撰 白鶴 天空 袋吊り 純米大吟醸」

白鶴酒造の最高峰という課題に、その名に恥じない精魂込めた造りと味わいで応えた「天空」シリーズは、白鶴酒造の高い商品開発力・酒造技術をあらためて知ることができる商品でもありました。

日常の食卓の「いつもの味」から、特別な日の一献まで。白鶴酒造が誇る幅広いラインナップは、社是とする「時をこえ親しみの心をおくる」を体現したものに他なりません。日常に寄り添うお酒だけではない、白鶴酒造のもうひとつの一面。「天空」は、とっておきの日に大切な人と味わいたいお酒でした。

(取材・文/渡部あきこ)

sponsored by 白鶴酒造株式会社

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