木枯らしの冷たさに肩を丸めながら、家路を急ぐ冬の夜。こんな寒い日の晩酌には、身体をじんわりと温めてくれる燗酒がぴったりです。テーブルに好みのおつまみを並べて、ベストな温度の燗酒をちびりとやれば、冬の寒さも一日の疲れも忘れてしまう、ささやかで幸せなひとときが始まります。
自宅で美味しい燗酒をつけたいと思っても、「どんなお酒が燗酒に合うかわからない」「道具をそろえるのが大変そう」と二の足を踏んでいる人も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、"熱燗愛"にあふれる人物に話を伺いました。
日常酒としてスーパーやコンビニで手軽に手に入るお酒を使って、美味しい燗酒のつけ方を教えてもらいましょう。すてきなイベントのお知らせもあるので、最後までお見逃しなく!
「お酒の視野を広げてくれた」"熱燗DJ"が語る熱燗の魅力
「こんにちは!熱燗DJつけたろうです!」
表情から熱燗愛がほとばしっているこの方こそ、今回話を伺う、熱燗DJつけたろうさん。「日本酒に対する愛情を熱燗で表現する」をモットーに、料理人とコラボレーションしたペアリングの提案、イベント出演、ワークショップ開催、ライターとしての活動などを通して、熱燗の美味しさを全国に、そして世界に広めるべく奔走している専門家です。
つけたろうさんが「熱燗DJ」を名乗るようになったのはおよそ2年半前から。もともと日本酒を好んでいましたが、熱燗に対してはあまり良いイメージをもっていなかったといいます。
「熱燗というと、飲み屋のメニューに『日本酒(熱燗)』だけ書いてあって、何の銘柄かもわからないような扱いが多いじゃないですか。安酒を温めてごまかして飲む、というイメージしかなかったんです」
とある燗酒専門店のマスターとの出会いで、つけたろうさんの熱燗のイメージががらりと変わります。お酒の銘柄によって銅のちろり、錫(すず)のちろり、ビーカーなどを使い分け、飲むときは平盃(ひらはい)の大きさを都度変えるこだわりぶり。料理と合わせてもすこぶる美味しい。「頭を殴られたような衝撃だった」とつけたろうさんは振り返ります。
「熱燗がこんなに美味しくて楽しいなんて知りませんでした。『温度が変わるとこんなに味が変わるんだ、自分でもやってみたい!』と思って、マスターの仕事を見ながら道具を買いそろえて、何度も失敗しながら自宅で燗づけするようになったんです。すると、そんなに美味しくないと思っていたけど熱燗にしたら合うというお酒にも出会えた。今まで自分の見ていたお酒の視野を広げてくれたのが熱燗でしたね」
その後も燗酒の魅力にどんどんのめり込んでいったつけたろうさんは、勤めていたIT企業を退社し、今年の春から熱燗DJとしての活動を本格的に開始。熱燗の若き伝道者として注目される存在となっています。
毎日飲める『沢の鶴 米だけの酒』その特別レシピとは?
今回、そんなつけたろうさんに「おいしい燗酒をつけてほしい」とお願いしたのが、沢の鶴「米だけの酒」です。純米酒売上No.1ブランド(※)である「米だけの酒」は、コンビニやスーパーで簡単に手に入り、日常酒として楽しんでも飲み飽きしないやさしいお酒。つけたろうさんには、これに合うベストな燗づけレシピを考えてもらいました。
(※)インテージSRI調べ 純米酒(特別純米酒含む) 2017年10月~2018年9月累計販売金額(全国スーパーマーケット/CVS/酒DS/DRUG 計)
「『米だけの酒』の印象は、まず値段に驚きました。純米酒900mlで729円(メーカー参考小売価格・税抜)は安すぎでしょ!さらに飲んでみたら、無限に飲めそうなほどやさしいお酒。"自宅で毎日美味しく飲めるお酒"というピンポイントのバランスで設計されているんだなと思いました」
常温でテイスティングした後は、使う道具を変えながら、温度を1℃単位で細かく変えて試したというつけたろうさん。"1升"も飲んで考えたという「米だけの酒」専用レシピとは、どんなものなのでしょうか。
「普段は銅か錫のちろりを使うことが多いんですけど、今回は耐熱ビーカーを使います。銅や錫の食器を使うと、水やお酒がまろやかになって美味しいとよくいわれますが、その変化が良い方向に作用する場合もあれば、邪魔なときもあります。先ほども言ったように『米だけの酒』は、それだけでとてもバランスが良いので、一番変化の少ないビーカーがいいかなと思いました」
さまざまな温度を試した結果、つけたろうさん的ベストな温度は51℃。燗床(かんどこ・湯煎をするための鍋、または容器のこと)の温度を75~80℃に保ち、徳利に移して口径の狭い平盃で飲むのがもっとも美味しい飲み方といいます。つけたろうさんいわく、よく飲食店などで使われる蛇の目のお猪口はプロが酒質を確かめるために使うもので、より美味しく飲むためには平盃が向いているとのことです。
道具をそろえて、熱燗をつけてみよう!
百聞は一見にしかず!ということで、つけたろうさんのオリジナルレシピで「米だけの酒」の熱燗をつけてもらいましょう。
1. 道具を揃えよう
まずは先述の道具のほか、湯煎するための鍋(ビーカーが入る深めの鍋がおすすめ)、温度計、布巾などの道具一式を用意します。
2. 燗床を用意しよう
鍋に水を張り、コンロのスイッチをON。温度計で測りながら、75~80℃になるまで温めます。温度が上がったら弱火に替えましょう。
3. デカンタージュしよう
高めの位置からビーカーに「米だけの酒」を注ぎ、徳利に移し、もう一度ビーカーに移すデカンタージュをします。デカンタージュとは主にワインに用いられる言葉で、お酒を別の容器に移し替えることを指します。「米だけの酒」の場合、デカンタージュをすることでお酒が空気にふれて、味がまろやかになるのだとか。
4. 燗づけしよう
「米だけの酒」を入れた耐熱ビーカーを燗床につけます。温度計の先端でビーカーの中を適度に混ぜながら、温度が均一になるよう整えます。温度計の数字が51℃になったらビーカーを引き上げましょう。
5. 酒器を温めよう
燗づけと並行して、燗床に平盃や徳利を軽くつけて温めます。
6. テイスティングして完成!
温まったお酒をビーカーから徳利に移し、平盃に注いでテイスティング。美味しくできたら完成です。
つけたろうさん特製レシピでつけた「米だけの酒」の熱燗、早速いただいてみましょう。
平盃からふわりとのぼるお酒の香りを楽しんでから、ひと口。スッと舌の上を滑っていったかと思うと、わずかな間を置いて米の旨味が口の中に広がっていくのを感じます。もともとやさしい飲み口ですが、熱燗にしたことでさらにカドがとれ、まろやかさが増したよう。ごくりと飲み干せば、温かいお酒が喉を通り、身体の内側からじんわりと温まっていくような心地良さが押し寄せてきます。すかさず、おかわりの平盃を差し出してしまいました。
料理とのペアリングを堪能しよう
熱燗をさらに楽しむため、つけたろうさんに「米だけの酒」と相性の良い料理も教えてもらいました。
「『米だけの酒』を飲んだとき、『練り物』かつ『味の濃くないもの』が合いそうだなと思いました。熱燗にしたときに燗映えして、温度を上げるとふわっと美味しくなるお酒だったので、多少油分があっても合いそう。油っぽさを残しつつもきれいな酒質に合うものというと、おすすめはさつま揚げです。揚げてある練り物ですが、煮物のような味の濃さはありません。また、魚介系のだしも合うと思ったので、今の時期はおでんもいいですね。だしの旨味を引き立ててくれるお酒だと思います」
さつま揚げをかじり、あとを追うように熱燗をひと口。程よい油と熱燗が舌の上でやさしく混ざり、甘味と旨味を増幅させてくれます。おでんとの相性も抜群。素朴なだしの風味と熱燗は、いっしょにいただいてもお互いの邪魔をすることなく、自然となじんでいきます。コンビニで買ったおでんにベストレシピの熱燗を合わせるだけで、冬に最高のごちそうが完成しました。
お茶も、お肉も、日本酒も。温度で変わる味覚の世界
さすが熱燗DJ!自己流でつけるよりも、何倍も美味しく熱燗を楽しむことができました。でも正直、疲れて帰った日や手っ取り早く燗酒が飲みたいという日は、つい電子レンジに頼ってしまいたくなる気もします。やはりきちんとした道具を揃えないと、美味しく燗酒をつくるのは難しいのでしょうか?
「耐熱ビーカーと温度計ぐらいは揃えた方がいいですね。安いものなら1,000円以下で買えますし、徳利などの酒器も100円均一で手に入ります。レンジもいいんですが、たとえばお茶を入れるとき、湯呑みに水を注いで茶葉を入れてレンジで温めて『お茶です』って出さないですよね?日本人だからお茶の作法は知っているのに、熱燗になるとなぜか作法がどこかにいっちゃう人が多いんですよ。お茶とかお肉とか、1℃や2℃で味が変わる味覚の世界というのは存在していて、それはお酒もいっしょなんです。なので、美味しい熱燗を飲みたいなら最低限の道具をそろえてほしいなと思います」
さらに「ちろりや酒器にこだわりたい人はそこにお金をかければよくて、最初から高い器具を買う必要はないですよ」と話してくれたつけたろうさん。手に入りやすい道具から始められそうで安心しました。
「いま、酒屋さんに行って自分でお酒を選んで買える人ってすごく少数だと思います。美味しい日本酒を飲ませてくれる店がすごく増えたので、そこで満足して自分でお酒を買わない。DJ的にいえば、レコード屋さんにディグり(DJ用語で"曲を探す"こと)にいかないんですよね。まぁ、僕はターンテーブルすら触ったことないので想像の話でしかないですけど(笑)。だから熱燗にするお酒選びが難しいと感じる人も多いと思うんですけど、たとえば『米だけの酒』みたいに、スーパーやコンビニで手に入りやすいお酒から試していくのはとても良いと思います。ぜひ自宅で熱燗を楽しんでみてくださいね」
熱燗DJつけたろう的 熱燗のつけ方
- 『米だけの酒』のベストレシピは「75~80℃の燗床に、デカンタージュしたお酒を耐熱ビーカーで51℃まで温め、平盃で飲む」
- 『米だけの酒』の熱燗に合うのは練り物。おすすめはさつま揚げとおでん。
- 美味しい熱燗を楽しむなら最低限の道具はそろえよう。
電子レンジでチンの手軽さも魅力ですが、ポイントさえ押さえておけば、店で飲むような、あるいはそれ以上に美味しい燗酒を自宅で楽しめるようになるかもしれません。まずは手に入りやすい道具と「米だけの酒」を用意して、今日から楽しい燗酒ライフを始めてみてはいかがでしょうか。
【お申し込みは締め切りました】12月13日、沢の鶴×熱燗DJつけたろう×SAKETIMESイベント開催決定!
熱燗DJつけたろう氏が目の前でつけた「米だけの酒」を実際に味わえるイベントを開催します。当日は、さつま揚げとおでんも用意。さらには、「米だけの酒」を醸す沢の鶴の牧野杜氏代行とつけたろう氏が熱燗トークを繰り広げます。いっしょに熱燗でほっこり温まりませんか?
◎イベント概要
- イベント名:沢の鶴×熱燗DJつけたろう×SAKETIMES トークイベント&熱燗試飲会
- 日程:2018年12月13日(木)
- 時間:[受付] 19:00 [開始] 19:30 [終了] 21:30
- 会場:原宿テーブルギャラリー(原宿駅徒歩3分)
東京都渋谷区神宮前1-15-4 東郷ビル1F - 会費:3,000円(税込)
- 定員:40名
- お申し込みは
こちら - 期日となりましたので、締め切らせていただきました。
◎プログラム
- 19:00 開場・受付開始
- 19:30 開演
- 19:40 トークセッション:沢の鶴牧野杜氏代行×熱燗DJつけたろう氏×SAKETIMES編集長小池。豪華商品が当たるクイズも出題します!
- 20:30 試飲・交流会:熱燗DJつけたろう氏特製の「米だけの酒」熱燗とおでん、さらにはさつま揚げをご提供します
- 21:30 終了
- 素敵なお土産もご用意しております
※プログラムは予告なく変更となる場合がございます。ご了承ください
(取材・文/芳賀直美)
sponsored by 沢の鶴株式会社
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- 手のひらの感覚”を継承する場─ 少量仕込みで醸される、沢の鶴こだわりの大吟醸酒造りに迫る
- 創業300年の老舗酒蔵が見つめるのは“次の100年”─ 沢の鶴を牽引する新リーダー・西村隆社長が考える、みずからの使命
- 沢の鶴×ヤンマー「酒米プロジェクト」は次のステップへ─ 研究者と農家が描く、日本酒と農業のこれから
- 斬新なボトルに込められたのは、男たちのロマン。沢の鶴×ヤンマー「酒米プロジェクト」第1弾商品のデザイン・酒質の魅力に迫る