一般財団法人「日本のSAKEとWINEを愛する女性の会 (通称:SAKE女の会)」の発足2周年を記念したイベント「大江戸東京 粋な酒祭り~Feel the Deep Tokyo~」が、7月下旬に開催されました。

「大江戸 東京 粋な酒祭り」が行われた神田明神

イベントのテーマは「東京産」。東京で造られたお酒(日本酒、ワイン、焼酎など)と、東京で採れた食材を使った料理を楽しもうという趣向です。当日は250人以上の参加者が、会場である神田明神の祭務所地下ホールに集まりました。

「SAKE女の会」とは?

「SAKE女の会」は、日本の伝統や食文化などを国内外へ発信している団体。お酒でおもてなしができる女性を「SAKE女」と定義し、"おもてなし力"を高める担い手として、活躍の場を広げています。

「SAKE女の会」のプレゼンテーション風景

代表理事を務めるのは、トータル飲料コンサルタントとして活躍する友田晶子さん。現在の会員数は約2,000人を数え、友好団体である「SHU for Ladies」や「東京日本酒部」「東京ワイン倶楽部」などを含めると、約12,000人ものネットワークをもっています。

「会のメンバーは、お酒や料理などの日本文化が好きな一般の男女が中心です。『知識はないけど、楽しみたい』『ちょっとだけ学んでみたい』『もう少し勉強して、お酒でおもてなしができるようになりたい』などの思いをもった人や、お酒のあるライフスタイルをナチュラルに楽しんでいる人が多いですね」と、友田代表。

「SAKE女の会」のプレゼンテーション風景

イベント内の記者発表では、友田代表から今後の活動について報告がありました。ネットワークを強化していくとともに、「楽しむ」「旅する」「学ぶ」をキーワードに、活躍の場を増やしていきたいとのこと。お酒による"おもてなし力"を強化するための「SAKE女検定」などの取り組みもユニークですね。

左から順に、乾杯の音頭をとる三國清三シェフ、代表理事の友田晶子さん、服部幸應さん、辰巳琢郎さん

続いて、会の顧問を務める「オテル・ドゥ・ミクニ」の三國清三シェフ、服部栄養専門学校の理事長・服部幸應さん、理事である俳優の辰巳琢郎さんがステージへ上がり、江戸切子の酒器で乾杯の音頭をとります。

色鮮やかな江戸切子の酒器

「このグラスで飲むと、特別な味がしますね」と服部さん。細かな装飾が刻まれた色鮮やかな江戸切子の酒器は、じっくりとお酒を味わいたい日にぴったりです。

細かい模様が刻まれたアクリル製の枡

江戸切子の他にも、アクリルでできた透明な枡など、酒器の展示販売もありました。東京らしさのあるモダンな酒器が並んでいます。

意外と知られていない、東京の地酒

参加者のなかからは「東京でお酒が造られているなんて知らなかった」と言う声もちらほら。東京には、およそ10社の日本酒蔵があるんです。

東京港醸造の「江戸開城」

港区の芝で酒造りをしている「江戸開城」の醸造元・東京港醸造。清酒の製造免許を取得して2周年を迎えました。

東京港醸造の「江戸開城」

もともと、文化9年(1812年)から続いていた酒蔵ですが、明治42年に廃業。2011年、酒造免許を取得したことを契機に復興し、どぶろくやリキュールの製造をスタート。2016年から日本酒造りを始めました。都心の真ん中で造られた日本酒に、参加者も興味津々の様子です。

豊島屋本店の「豊島屋十右衛門」

慶長元年(1596年)創業の長い歴史をもつ豊島屋本店。神田明神の御神酒でもある「金婚」などを醸造しています。江戸時代に、ひなまつりで飲む「白酒」を流行させたり、現在はいろいろな酒屋でみられるようになった角打ちを始めたり、歴史やストーリーにあふれる酒蔵です。

この日は、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーとコラボした「豊島屋十右衛門」や、東京産の米と酵母を使用して造った「江戸酒王子」を試飲することができました。

東京神田の限定酒「利他」シリーズ

神田豊島屋のブースには、ラベルがリニューアルされた"神田の居酒屋でしか飲むことができない"という限定酒「利他」の全種類が並びます。

小澤酒造の「東京蔵人 純米吟醸 生酛造り」

青梅市にある「澤乃井」の小澤酒造。おすすめは、東京を全面に押し出した「東京蔵人 純米吟醸 生酛造り」。昔から続けてきた生酛造りの味わいを大きく変え、新しい挑戦をしているようです。

石川酒造の「東京の森」

こちらは「多満自慢」の醸造元である石川酒造。リンゴのような甘酸っぱさが特徴のにごり酒「ふわる白」や、杉の木をつけ込んだ風味豊かな「東京の森」など、個性的なお酒が並んでいました。

東京産の食材を活かした料理の数々

東京産の野菜を使った「オテル・ドゥ・ミクニ」のフレンチのおつまみ

「東京のお酒には、東京の食材を使った料理を」ということで、三國シェフが運営する「オテル・ドゥ・ミクニ」からは、東京産の野菜を使ったフレンチのおつまみが提供されました。カリフラワー、ブロッコリー、ゴーヤ、ズッキーニ、ラディッシュなど、東京産の野菜をふんだんに使った一品です。

江戸東京野菜とセレブ有難豚のおつまみ

東京産の食材やお酒にこだわった人気の飲食店「押上よしかつ」からは、江戸東京野菜とセレブ有難豚のおつまみ。

江戸野菜とは、江戸時代から伝えられてきた東京都内の農地で作るご当地野菜のこと。現在、48品目が認定されています。「寺島なす」や「本田ウリ」など、貴重な食材を使った料理を楽しめました。

「味噌料理 みそら屋」の味噌プリン

「味噌料理 みそら屋」からは、なんと味噌を使ったプリン。甘じょっぱい味わいで、デザートというよりもおつまみとして楽しめる味わいでした。

チーズプロフェショナル協会提供のチーズ

また、チーズの魅力を広めるべく発足したチーズプロフェショナル協会のブースもありました。日本酒と同じ発酵食品であるチーズは日本酒との相性が抜群です。

八丈島名産のくさや

他にも、八丈島の"くさや"や江戸の手造りせんべい、和菓子などの販売もあり、お酒と料理のマリアージュが充分に堪能できました。

 

SAKEを通じて、おもてなしをする

「SAKE」というと「日本酒」を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、この会では、焼酎やワインも含めたすべてのお酒を指しています。「SAKE女の会」の特徴は、SAKEを通じておもてなしをすることであると、友田代表は話します。

2周年を迎えた感想をうかがうと「あっという間でしたね。協会をつくったことでたくさんの人と出会い、ネットワークが広がりました」と、これまでを振り返ってくれました。

女性が好む酒の特徴を聞いてみると、こんな答えが返ってきました。

「華やか、クリーン、フルーティー、口当たりが良いもの。ただし、シンプルすぎずに深みがあり、心踊る余韻が感じられるものでしょうか。あとは、料理と組み合わせたときに、グッと美味しさを引き立ててくれるのも大事なポイントです。そして、飲むほどに造り手の顔が見え、知るほどにストーリーを感じるもの。それは、日本酒・焼酎・ワイン・ビール・ウイスキーすべてに共通して言えることだと思います」

「大江戸 東京 粋な酒祭り」の会場の様子

さらに、2020年の東京オリンピックを迎えるにあたって、海外から旅行に来る人たちに日本の魅力が伝わるような"おもてなし"をすることが重要だと、友田代表は語ります。

「世界各国どの国でも、國酒でおもてなしするのが基本。知識や技術をもったプロが最前線で活躍するのはもちろんですが、隣り合った海外のお客さんに美味しいお酒をおすすめしたりすることも、立派なおもてなしですよね。『SAKE女の会』では、一般愛好家の"おもてなし力"を育て、素敵なおもてなしができる人を増やしていきたいと思っています」

そのためにも、イベントやセミナーなど、造り手のストーリーを知る機会を増やし、SAKEを学びたい人の手助けをしていきたいとのこと。

「大江戸 東京 粋な酒祭り」の会場の様子

「活動を通して、ファンも造り手もみんなが豊かになってほしい。『SAKE女の会』がその一助になればうれしいですね」

日本の魅力を世界中の多くの人に知ってもらうべく活動する「SAKE女の会」。今後に注目です。

(文/橋村望)

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