全国的に高い人気を誇る地酒蔵が集結し、東京湾を巡るクルーズ船上で開かれた日本酒パーティー「TOKYO SAKE CRUISE  2018 by 日本酒オーシャンズ」。このイベントの魅力は、蔵元みずからがブースに立ち、自慢の日本酒を参加者に直接提供してくれるところです。

「TOKYO SAKE CRUISE」のデッキで楽しむ参加者たち

東京湾の洋上で夕景を眺めながら、人気の蔵元たちが手塩にかけて醸したお酒を極上の料理とともに楽しむひととき。その様子をレポートします。

イベントを仕掛けるのは、11人の蔵元たち

4回目を迎える本イベントの仕掛け人は、蔵元グループ「日本酒オーシャンズ」の代表を務める、山形県・亀の井酒造の今井俊典さん(画像下段左から3番目)です。

「TOKYO SAKE CRUISE」を企画した「日本酒オーシャンズ」のメンバー

「きっかけは2011年の東日本大震災でした。東北地方の太平洋に面した酒蔵が甚大な被害を受けましたが、それ以外の地域でも、古い蔵などが倒壊したり傾いたりした酒蔵がたくさんありました。そこで、何か元気が出るようなことはできないかと考えたんです」

今井さんは、意欲的な挑戦をしている同世代の仲間を募り、まだ誰も開催したことのない日本酒イベントを企画します。それが、クルーズ船を会場にした日本酒パーティーです。

「日本酒に興味をもち始めたばかりの人が『おしゃれで楽しそう』と参加してもらえたらと思って考えました。参加する蔵元は、外見的なイケメンだけでなく、酒造りの面でもイケてる人を条件に、ひとりずつ口説き落としたんです。かなり厳選したため、実際に開催するまで2年余りかかりました。

利益度外視で準備を進めましたが、会費はやや高めの設定(1万円)になってしまいました。それでも、1年目から300人以上の参加者が集まってくれました」

回数を重ねていくうちに、今井さんはイベントに手応えを感じるようになったそうです。

「TOKYO SAKE CRUISE」で日本酒を提供する蔵元たち

蔵元グループ「日本酒オーシャンズ」のメンバーは、以下の通りです。

  • 今井俊典さん(亀の井酒造/山形県)
  • 薄井一樹さん(せんきん/栃木県)
  • 大西唯克さん(木屋正酒造/三重県)
  • 大沼健さん(大沼酒造店/宮城県)
  • 田中克典さん(白糸酒造/福岡県)
  • 冨田泰伸さん(富田酒造/滋賀県)
  • 宮坂勝彦さん(宮坂醸造/長野県)
  • 山田昌弘さん(山忠本家酒造/愛知県)
  • 吉田泰之さん(吉田酒造店/石川県)

この9蔵元は2015年に開催された第1回からの常連です。今回から、渡邉康衛さん(福禄寿酒造/秋田県)と小牧伊勢吉さん(小牧醸造/鹿児島県)が新たに加わり、11人の体制になりました。

小牧醸造は日本酒を造っていない焼酎蔵ですが、「先進的な蔵なので、他のメンバーに新鮮な刺激を与えてくれるのを期待しています」と、今井さん自身が参加を依頼したそうです。

蔵元とともに語らう、極上の日本酒体験

当日の参加者は380人と、予想を上回りました。東京・日の出桟橋に横付けされたクルーズ船に乗り込むと、ホールで蔵元たちがお出迎え。期待感が高まっていきます。

「TOKYO SAKE CRUISE」で参加者を出迎える蔵元たち

船が出港すると、蔵元の紹介に続いて乾杯が行われ、パーティーが始まりました。多くの参加者が、この日のために用意された料理に舌鼓を打ちながら、蔵元が持参した選りすぐりの美酒を楽しみます。

蔵元から直接お酒を注いでもらいながら、「今季の造りはどんな感じでしたか」などの質問や「このお酒が一番好きです!この冬もたくさん造ってください」というメッセージなど、会話が大いに弾んでいる様子でした。

「TOKYO SAKE CRUISE」で日本酒を提供する蔵元たち

後半になると、多くの参加者が日本酒を片手にデッキへ出て、対岸の羽田空港に離発着する飛行機や、夕焼けに照らされるレインボーブリッジなどの美しい景色を堪能。海風に当たりながら、東京湾から見える夕景を眺めていました。

「TOKYO SAKE CRUISE」のデッキで楽しむ参加者たち

パーティーが終了し下船の時間になると、蔵元たちが勢ぞろいしてお別れの挨拶。みなさん、満足そうに引き上げていきました。

日本酒オーシャンズのクルーズ船上パーティーは、来年以降も開催の予定です。特に、2020年は東京オリンピックが開催される記念すべき年になるので、規模を大幅に拡大した開催を目指しているのだとか。今から楽しみですね。

(取材・文/空太郎)

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