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「コーポレート・スローガン」から紐解く、酒造りに込められた思い

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現在、日本には1,400を超える酒蔵があります(※)。それぞれに日本酒を醸してきた歴史と、その中で築き上げられた蔵ならではのこだわりや考え方があり、それらは酒造りに色濃く反映されています。
※国税局 平成27年度調査「清酒製造業者数の推移」より

酒造りにかける思いは、各蔵のHPやパンフレットなどに「コーポレート・スローガン」として表現されています。今回は、HPで謳われているスローガンに着目し、各蔵の思いを紐解いていきます。

「旭酒造は酒造りが好きです。」旭酒造(山口県)

獺祭」で有名な山口県の旭酒造株式会社。最近は、飲食店で「獺祭」の名を目にする方も多いのではないでしょうか。そんな旭酒造のスローガンは、「旭酒造は酒造りが好きです。」というもの。

旭酒造は日本酒の美味しさを世界中に届けるために、これまで当たり前とされてきた業界の常識にとらわれない発想で酒造りを行っている酒蔵です。

例えば、旭酒造には酒造りの職人であり、蔵の醸造責任者である"杜氏"がいないことで有名です。これまで杜氏の頭の中にしかなかった酒造りのノウハウを、もっとオープンにしたいという考えのもと、様々なデータを活用し、杜氏に頼りきりにならない酒造りを行っています。

それ以外にも、ジョエル・ロブションなどの世界有数のレストランとコラボしたり、「獺祭」を使った香水やお菓子を企画したり、日本酒の魅力を世の中に広げるための新しい取り組みを続けています。

新たなアクションを起こし続けられるのも、スローガンにあるように酒造りが好きで、日本酒の美味しさを広げたいという思いがあるからこそなのではないでしょうか。

旭酒造のホームページはこちら

「ひとは、掛け橋。」平和酒造(和歌山県)

国外最大級の日本酒コンテスト「IWC(インターナショナルワインチャレンジ)」の吟醸酒・大吟醸酒の部で2年連続受賞を達成したこともある「紀土」醸造元・平和酒造株式会社

平和酒造の代表取締役専務である山本典正さんは、1978年生まれで日本酒業界でも若手のホープとして注目される存在。2015年の春から「HEIWA CRAFT(ヘイワクラフト)」というクラフトビールの製造も開始しており、新しい試みにも積極的に取り組んでいる、勢いのある酒蔵です。

スローガンである「ひとは、掛け橋。」

そして、このように続きます。「私たちの仕事は、自然と食卓の境目に立ち、四季の恵みを形にして世の中に送り出すこと。」

日本酒の原料である"米"や"水"のような自然と、日本酒が飲まれる食卓との掛け橋になるのが、平和酒造の考え方なのですね。

また、平和酒造では日本酒の酒蔵としては珍しく、若い人材を採用するため社員の新卒採用を積極的に行っている蔵でもあります。人を大切にしながら酒造りをする真摯な姿勢が伝わってきます。

平和酒造のホームページはこちら

「日本酒は、もっともっと楽しくなれる。」萬乗醸造(愛知県)

江戸時代初期の1647年に創業され、300年以上の歴史がある株式会社萬乗醸造。代表銘柄は、「醸し人九平次」です。

「醸し人九平次」は、十五代・久野九平治氏が1997年に立ち上げたブランド。熟した果実味のような心地よい酸味が特徴で、フレンチとの相性もよくフランスの三ツ星レストランにも採用されている日本酒です。

デザインも印象的で、ワインと見間違えてしまうようなオシャレなラベルのお酒もあります。また、ワイングラスで日本酒を呑むスタイルを最初につくったのは、萬乗醸造とも言われています。

萬乗醸造は日本酒のみならず、フランスでワインの醸造も行なっています。それも、本当にいいものは異なる領域との境界線で生まれるという思いがあるからとのこと。まさに、「日本酒は、もっともっと楽しくなれる。」の精神で、日本酒の可能性を広げている酒蔵ですね。

萬乗醸造のホームページはこちら

「醸は農なり」山根酒造場(鳥取県)

有限会社山根酒造場は1887年から続く鳥取県の酒蔵です。代表銘柄は「日置桜」。"食を邪魔しない酒"をコンセプトとして造られた、毎日呑んでも飽きないバランスの良い日本酒です。

スローガンが「醸は農なり」であるとおり、山根酒造場は日本酒の原料である米に対して非常にこだわりがある酒蔵です。

「農家の方にも、お酒になるイメージを持って酒米を生産してほしい」という意図のもと、1990年よりいくつかの生産者と契約をして契約栽培を行なっています。

また、山根酒造場は"シングル醸造"という醸造方法を採用しています。これは、酒米の生産者毎に仕込桶を分けて、他の生産者の米を混ぜないというもの。非常に手間のかかる方法ですが、畑の土壌や肥料毎に日本酒の味の変化がわかるようになり、品質の向上につながっているようです。

他にも、戦後の農業の変遷で消えてしまったと言われていた幻の米"強力"という酒米を復活させた蔵としても有名です。

山根酒造場のホームページはこちら

「原料から熟成まで うまい日本酒造りにこだわり 日本酒文化を守り続ける」菊姫(石川県)

石川県の代表的な銘柄「菊姫」を醸す菊姫合資会社。石川県で400年以上の歴史を有する老舗蔵です。

「原料から熟成まで」とあるように、米作り、酒造り、さらにその後の熟成にまでこだわって酒を造る蔵です。「菊姫」の吟醸酒・純米酒には、山田錦が100%使用されています。それも、山田錦の中でも特に評価が高い、特A地域の兵庫県三木市吉川町にて「村米」という栽培契約地区を持ち、安定して高品質な原料を仕入れているとのこと。

また、熟成についても、他の蔵とは一線を画すこだわり様です。それぞれの酒に合った熟成期間を設定し、管理・出荷を行っています。熟成酒のラインナップとしては三年熟成の「黒吟」や、十余年熟成の「菊理媛(くくりひめ)」があります。

他にも、杜氏の高齢化と後継者不足により、職人が足りない事態をいち早く察知し、次代の酒造りを担うスペシャリスト「酒マイスター」の募集を行っていることも菊姫の大きな特徴でしょう。

菊姫合資会社酒造のホームページはこちら

蔵の信念が、言葉に宿る

今回は、5つの酒蔵をピックアップして企業スローガンをご紹介しました。「言霊」という言葉があるように、それぞれの蔵が大事にしていること、伝えたいことが一つひとつの言葉に宿っています。ぜひ、ご自身で気になる蔵や銘柄があればHPをのぞいてみてくださいね。

(文/あらたに けんと)

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あらたに けんと

利酒師コピーライター。1990年生まれ。岐阜県飛騨高山育ち。大学時代に経験した、日本酒のスタートアップ企業でのインターンがきっかけで日本酒にのめり込む。日本酒に関わる人たちの想いを、言葉を通じて世の中に伝えたいと思っています。