今年で10回目という節目を迎えた「北アルプス三蔵呑み歩き」。長野県大町市に蔵を構える「北安大國」の北安醸造、「白馬錦」の薄井商店、「金蘭黒部」の市野屋商店の3蔵をまわりながら、各蔵のお酒を楽しめるイベントです。

大町の商店街を、お猪口片手に楽しもう

「白馬錦」で使われる美山錦も、こんなに成長して稲刈りを待つだけの状態。そんな日本酒を飲むには気持ちの良い天気の9月2日に、「北アルプス三蔵呑み歩き」が開催されました。

まずは参加証代わりのお猪口を1,500円で購入。これを持って町を歩きながら、各蔵のお酒を堪能します。

お猪口とイベントのポスターは、薄井商店の息子さんがデザインしているのだとか。毎年の恒例になっているようですね。

各蔵ごとに鏡開きをしてイベントがスタート。毎年、イベントの開始前から並んでくれた参加者といっしょに鏡開きをするのだそう。今年は大町市のキャラクター「おおまぴょん」も鏡開きに参加してくれました。

名水の里・大町が誇る3つの酒蔵

薄井商店「白馬錦」

「よく『辛口ちょうだい』って言われるんだけど、うちの酒は辛口じゃなくて旨口だから」と社長が話すように、酒質が穏やかで呑み飽きしない酒造りをモットーとしている薄井商店。地元農家が育てた契約米を使って、地産地消に取り組んでいます。

そんな社長がみずからお燗番を務めます。「銘柄によって美味しい温度が違うからね」と、きめ細やかな温度設定で燗酒を提供していました。

各蔵で異なるイベント用のお酒「呑み歩きスペシャル」もいただきました。薄井商店は生酛造りの純米原酒。蔵の中で生酛のお酒はこちらだけなので、まさに参加しないと口にできない一品です。

北安醸造「北安大國」

首都圏でも人気の高い「北安大國」を醸している北安醸造。3蔵の中で一番小さな蔵ですが、歴史ある木造建築で、特に麹室の柱が立派です。

ていねいな酒造りをしている北安醸造の呑み歩きスペシャルは純米大吟醸酒でした。

そして、提供されているおつまみが豊富で参加者にも大人気。あれよあれよというまになくなり、スタッフも必死になっておつまみを追加していました。

市野屋商店「金蘭黒部」

市野屋商店は慶応元年創業。3蔵の中でもっとも歴史が古く、明治時代に建てられた建物を今も使っています。空調を使わずに窓の開け閉めで蔵内の温度を調節するなど、昔ながらの造りをそのまま受け継いでいます。キレの良い軽快な味わいで、食事と合わせやすい銘柄が多いのも特徴ですね。

呑み歩きスペシャルは、5℃の低温で熟成させた1本。旨味をしっかりと感じつつ、後味はスッキリとキレの良いタイプ。

おつまみの茗荷も爽やかな香りに醤油のコクが加わって相性抜群でした。

10周年らしい企画が盛りだくさん

「北アルプス三蔵呑み歩き」の開催は、今回で10回目。節目の年ということで、蔵から蔵までを人力車で移動することができました。乗車した方も「気持ち良くて楽しいね」とご満悦。

北安醸造では、製麹に使う2階の枯らし場を使って、写真展が行われていました。

薄井商店では、長野県松川村に釜を持つ作家の器展を開催。

歩いて呑んで疲れたら、大町自慢の美味しい水を。町内の至るところで飲むことができます。

商店街の東側には、標高900mの里山・居谷里湿原から引かれた「女清水」と呼ばれる軟らかい水(硬度13度)が流れています。対して西側に流れているのは、標高3,000m級の北アルプス上白沢から引かれた「男清水」という硬めの水(硬度15度)。

実は、この2つの水を混ぜて飲むと縁結びや夫婦円満の効果があると伝えられているんです。カップルで参加していっしょに水を飲むのもいいですね。

地域一体となって盛り上がるこのイベント。町内のお店も多く出店し、おつまみなどを販売しています。広場ではフリーマーケットが行われ、地元の主婦たちがアイデアを出しながらワークショップを開いたり、手作りグッズを販売したりしていました。

地元に根ざした呑み歩きイベント

このイベントの前身は、2004年から始まった「地酒と料理で遊ぼう会」という企画。地元で呑まれているお酒が普通酒ばかりだったころ、自分たちが造る純米酒のおいしさと、それが地元の食材を使った料理に合うことを知ってもらうため、有志が集まって発足しました。最初の7年間は、ホテルを会場にして開催。その後、実行委員会を新たに立ち上げ、「北アルプス三蔵呑み歩き」というイベントに変わりました。

発案当時から通算17年も続いている「北アルプス三蔵呑み歩き」。各蔵の純米酒に対する思いと地元を盛り上げたいという強い気持ちには圧倒されます。「今後もできる限り続けていきたい!」と語る蔵元たち。水のおいしい大町市で醸す日本酒を味わいに、地元のみならず、全国から多くの方に参加してほしいと思います。

(文/まゆみ)

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