日本酒とチーズの出会い。近年、その相性の良さは多くの愛飲家によって知られ、酒を楽しもうというシーンにチーズが登場するというのは、自然になってきました。また、熟成の度合い、香りや味の濃淡などさまざまなタイプがあり、好みに合わせて選ぶことができるのは、チーズならではの楽しみ方といえるでしょう。

そこで今回は市販のチーズをカスタマイズ。日本の食卓に馴染みの深い酒粕で作った、オリジナリティあるチーズを肴に酒を楽しもうと思います。

モッツァレラチーズの粕漬けを作る

材料はフレッシュタイプ(非熟成)のモッツァレラチーズ。熟成した風味の濃いチーズを漬物にして、さらに深い味わいを楽しむという手もありますが、今回は酒粕の風味とともにチーズを味わってみようという趣旨で、熟成していない(風味が淡い)チーズを使います。

※ このツマミはアルコールを含みますのでご配慮ください

【材料】

  • モッツァレラチーズ.....2個
  • 酒粕.....500g
  • 味醂.....100cc
  • 味噌.....30~40g

【その他用意するもの】

  • ガーゼ

【作り方】

はじめに、粕床を作ります。

チーズの粕漬のレシピ写真

イ. 酒粕を常温に戻し柔らかくする(混ぜやすいように)
ロ. 材料をすべて混ぜ合わせる
※ フードプロセッサーを使うと簡単です

次に、チーズを漬けます。

チーズの粕漬レシピ写真二枚目

チーズを保存液から出し、ペーパータオルなどで包んで水気をよく切ります。ガーゼが重なりすぎないように注意しながら、チーズをガーゼで包みます。

チーズの粕漬につけ方の違い写真

<漬け方1>

  • チーズ全体に粕を塗りつけて、ラップで丸ごと包んで保存
  • 酒粕は少量で足りるが、粕の再利用が面倒

<漬け方2>

  • フタつきの容器に、チーズを酒粕ごと詰める
  • チーズを取り出したあとも粕床を再利用できる

いずれの方法でも3~5日間程度、漬け込みます。

粕香るチーズのできあがり!

粕床から取り出してガーゼをはがすと、チーズの表面は水分が抜け、若干固くなっています。包丁をすべらすようにしてチーズを輪切りにしました。

その表面は、カプレーゼなどの、袋から開けたてを切ったときの柔らかくみずみずしい感触よりも、幾分乾いているように感じられますが、モッツァレラ特有のしっとり感は変わりません。

チーズの粕漬の写真

ほんのりと粕の香りがします。モッツァレラチーズ本来の淡い風味がちょっと凝縮されたような、そんな味わいです。酒粕に含まれるわずかなほろ苦さも感じます。

モッツァレラチーズは、それだけを単体で食べるにはちょっと味わいが物足りない、他の食材と合わせて持ち味が発揮されるチーズですが、そのおかげで、良い意味でひとクセあるツマミに変身したというところでしょうか。

チーズの淡い風味と、遊穂の華やかな酸が調和

肴はチーズということで、酒選びは生酛をキーワードに。ここまでは定石といえますが、相手はチーズのなかでも味わいが柔らかなタイプなので、コクを重視したものより、酸が潤う爽やかなものが良さそうと考えました。

チーズの粕漬と日本酒、遊穂の写真

遊穂 生酛純米・玉栄 生原酒(御祖酒造/石川県)

上品な酸を感じさせる香り。含むと甘酸っぱく口当たりは穏やかです。生酛ならではの豊かな酸の陰には、複雑味が適度に潜んでいて、これによって酒全体のバランスが整えられているような印象を受けました。キレが良く、食事とも合わせやすそうです。

チーズそのものよりも、後味と縁の良さを感じました。酒粕が放つ複雑な香りと遊穂の複雑味が、じんわりと馴染んでいく。そんなイメージです。チーズをきっかけに、酒はさらにその奥深さを伝え、いっそう美味しく感じるのでした。

遊穂を徳利に入れている写真

燗を試してみました。含み香は奥行きを増し、膨らんだ酸がさらに旨味を引き出します。

ぬる燗から熱燗まで温度相応にポテンシャルを発揮し、酒そのものは華やかさを増し美味しくなりますが、あまり香りや酸が主張すると、モッツァレラチーズ独特の淡い旨味が覆い隠されるようなイメージが否めません。

自分の好みでは、常温あたりでゆるゆると楽しむのがちょうど良い。そんな楽しみ方を見つけました。

より美味しく楽しみたいなら

モッツァレラチーズの粕漬。食べ方としては、そのままでも良いのですが、粗挽きの黒コショウをふる、オリーブオイルをかけ回すなどして香りを足すとより美味しくなります。

チーズの粕漬を醤油につけている写真

さらにおすすめは、わさび醤油。刺身を食べるようにわさびをつけ醤油で味わうと、これが意外に美味しい。ちょっとクセになる美味しさです。もちろん、酒とも合います。

さわびと醤油を同量で溶いたわさび醬油ペーストをディップするのも一興です。

(文:KOTA/編集:SAKETIMES)

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