ビストロやバーで提供される料理としておなじみのリエットは、ワインにとてもよく合います。やわらかく、なめらかな豚肉の食感と、口の中に広がる旨味。これはきっと、日本酒とも相性が良さそうです。
リエットの定義は諸説ありますが、おおむね、動物の肉を脂とともに時間をかけてやわらかくなるまで煮詰め、ペースト状にしたフランス料理のこと。本格的なものもありますが、今回はとてもシンプルな作り方でできる、庶民的な味わいのリエットを紹介します。
日本酒を使って、やさしい風味に仕上げる
リエットは通常、煮込みに白ワインを使います。しかし、ここはあえて日本酒を。日本酒ならではの旨味とコクを加えて、やさしい風味に仕上げましょう。
【材料】
- 豚小間切れ......400グラム
- 玉ねぎ......中1/2 (みじん切りにする)
- ベーコン......スライス1枚 20~25グラム (みじん切りにする)
- ニンニク......1片 (みじん切りにする)
- ローリエ......中2~3枚
- 塩コショウ......適量
- 酒......1カップ (辛口タイプがおすすめ)
- 水...... 1カップ
- ブイヨン顆粒......小さじ2
- オリーブオイル......適量
【作り方】
イ. 豚肉を炒めやすいように刻み、塩コショウをふっておく。キッチン用のハサミを使うと簡単です。
ロ. ニンニクとベーコンをさっと炒める。
ハ. 香りが立ってきたら、豚肉を加える。何回かに分けて入れると、炒めやすいですよ。
ニ. 火が通ったら、玉ねぎを加えて炒め合わせる。
ホ. 玉ねぎが透き通ってきたら、酒・水・ブイヨン・ローリエを加え、落しぶたをして、中火で水分が飛ぶまで煮込む。たまに様子を見て、アクが出ていたら取り除きましょう。
ヘ. 1時間ほど煮込みます。写真は、完成まであと少しという状況です。ここまできたら、焦がさないように注意してください。煮上がったら味見をして、塩コショウで好みを調整します。
ト. 煮込んだものをフードプロセッサーで撹拌します。粗挽きが良いか、やわからいものが良いか、食感の加減はお好みでどうぞ。また、オリーブオイルを大さじ1~2程度加えると、よりしっとりとやわらかく仕上がります。
チ. 以下で紹介しているのは、プロセッサーの回す時間を短めにし、粗挽きにしている様子。仕上がったら、冷蔵庫で冷やします。
フードプロセッサーがない場合でも、すり鉢を使ったり、フォークですり潰したりすれば、ある程度、リエットの形になります。その際、多少の労力を覚悟してください。タイムやセージを加えると、肉の美味しさがより引き立ちますよ。
今宵の晩酌はカジュアルスタイルで
リエットを肴に晩酌を楽しみましょう。
今回はバゲットにディップして味わいます。食べる直前にオリーブオイルや黒コショウをかけると、リエットの香味が引き立つのでおすすめです。盛り付けにルールはありませんが、今回は型を使いました。小さな容器に入れるのも良いでしょう。
また、オードブルとしてさらに楽しめるよう、玉ねぎといっしょに塩漬けにしたオリーブと、クリームチーズを添えました。どれも、酒との相性が良さそうです。
生酛の秀作「澤の花」がドラマチックに映る
肴は肉。それも、脂を含むまったりとした味わいのため、生酛の酒を選びました。熟成酒という選択肢もありましたが、パーティーのように快活に食事を楽しむシーンを想定し、今回は食中酒としての生酛の出番。
まずは常温で。穏やかながら、素材の良さを思わせる優しい香り。含み香はふくよかです。豊かな酸味で口の中が潤った頃、ぐぐぐっとコクが湧き上がってきました。複雑な味わいですが、バランスの良さが感じられます。そして、喉を通ったのと同時に、すっと引いていく旨味。後に残るのは、酸の余韻。実に生酛らしい、実直な酒ですね。
ペーストに変身した豚肉は、舌にからむ濃厚な旨味があり、後を引く美味しさ。口の中が生酛で潤ったあとということもあって、味わいがより洗練されました。
そしてまた、酒を一口。酒を舌に馴染ませた瞬間、料理の余韻と溶け合っていきます。あまりにもピタリとした両者の出会い。鮮烈な驚きも束の間、その後、じわじわと両者の旨味が蘇り、口の中を優しく包んでくれました。
燗も試してみました。酒は、より懐が深くなったようにリエットを迎え入れます。より柔軟性を増した酒は、食欲をさらに掻き立てます。このポテンシャルには感服。今回は、人肌燗との相性が良かったです。
付け合わせのチーズにはクリームチーズを選びましたが、「澤の花」には、もっと香味が強いものでも良かったかもしれません。オリーブのほうは、実の油分と酒の旨味がやんわりと溶け合うような、まろやかな縁を感じさせてくれました。
(文:KOTA/編集:SAKETIMES)