冬。鱈の美味しい季節です。
口の中でふんわりと広がる柔らかな触感。淡白でありながらやさしい旨味にあふれ、食べ飽きることがありません。もっぱら、鍋やムニエル、フリッターなどで味わうことの多い鱈ですが、今回はアクアパッツァにしてみましょう。
アクアパッツァは、イタリアの漁師料理が発祥なのだそう。獲れたての白身魚を、貝類やトマトとともにニンニクを効かせつつ白ワインと水で煮るのが基本形。豊かな魚介の風味を味わえるのが、何よりの魅力です。
白ワインがよく合う料理と言われているので、日本酒との相性も期待大ですね。
日本酒を使って、やわらかなコクを
作り方は簡単なのに、思わず声が出てしまうほど美味しいアクアパッツァ。今回は白ワインではなく、日本酒を使いましょう。決して代用品ではありません。日本酒独特のコクを出そうという目的です。
日本酒はかなりの量を使います。多くの量を使うぶん、酒質が料理の味わいを大きく左右するので、どんな酒でもいいというわけではありません。料理酒としてはちょっと贅沢ですが、生酛を使ってみましょう。コクがあって、温めたときに旨さを発揮する。そんな印象があるからです。
<材料> 2人分
- 生鱈切り身......2切れ (塩コショウを少々ふっておく)
- アサリ......150~200g (砂出しをしておく)
- ミニトマト......5~6個 (半分に切る)
- ニンニク......1片 (みじん切に)
- 玉ねぎ......8分の1から4分の1程度 (くし切りに)
- お好みで、キノコやパプリカなどを用意してもいいでしょう
- パセリ......少々 (細かく刻んでおく)
- オリーブオイル......大さじ2
- 煮汁......酒100cc、水100cc
<作り方>
通常はフライパンを使いますが、ここでは小ぶりなすき焼き鍋を。作りたてをそのまま食卓に披露するという演出です。
- イ. 鍋にオリーブオイルとニンニクを入れてから、中火で加熱する
- ロ. ニンニクの香りがしてきたら、鱈を皮側から焼く
※玉ねぎを使う場合は、このタイミングでいっしょに焼いてもいいでしょう - ハ. 鱈の焼き目がこんがりとしてきたら、ひっくり返してもう片面にも火を通す
- ニ. 残りの具材をすべて入れる
- ホ. アサリの貝が開き、すべての具材に火が通ったらできあがり。パセリを散らす
風味豊かな和製イタリアンを召し上がれ
完成です。まずは、おつゆを味見。ニンニクの香味とアサリの出汁がほどよく効いています。そのおつゆをまとった鱈がほくほくとしていて美味。酒で煮ただけのシンプルな料理ですが、いや、酒で煮たからこそ、この味わい深さがあるのでしょう。漁師料理というと豪快な"野趣"をイメージしがちですが、このアクアパッツァは穏やかな優しさに満ちた仕上がりでした。
確かに白ワインと合いそうですね。さらっとした口当たりのもの、ちょっとコクのあるタイプのもの、どんな酒とも相性が良さそうです。
魚介の旨味を、緑丘蔵のフレッシュな新酒とともに
2017年、北海道上川町に新たに誕生した上川大雪酒造の緑丘蔵(りょっきゅうぐら)から待望の新酒が届きました。地元では大きな話題となった上川大雪酒造。SAKETIMES編集部もかねてから注目し、その動向を取材してきました。
「彗星」は、北海道で生まれた酒造好適米。キレのある旨さに定評があります。グラスに注ぐと立ち上がるのは、爽やかで甘酸っぱい果実香。フレッシュな新酒の出で立ちに心がときめきます。
そして、香りの余韻はそのまま口の中にも。みずみずしい酸が、まろやかな舌触りとともに華やかに膨らみました。同時に、確かな旨味も感じられますね。
料理とともに味わってみると、酒はより洗練さを増し食欲をそそります。鱈の淡白な味と濃厚な風味のアサリ、そのどちらとも良縁です。美味しく楽しく、酒も箸も進みますね。新酒のフレッシュな香味は、トマトの甘酸っぱさとも良縁。見事に同調しています。切れ味も爽やかで、ふと白ワインを口にしているような気持ちになりました。
総じて、この酒は「彗星ってどんな米?」の答えを体現したような出来映えではないでしょうか。誕生したばかりの上川大雪酒造、何もかもが初めてという環境でこの酒を造るとは。見事としか言いようがありません。
(文:KOTA/編集:SAKETIMES)