酒と肴の関係。出会いのパターンは2通りあると思います。その日に食べたいものがあり、それに合いそうな酒を選ぶ。または、その日にこれを呑もうと決めた酒があり、それに合いそうな料理を考える。私は旬のものに目がないので、晩酌はもっぱら前者の流れで始まります。
しかし、今回は逆。なじみ深い北海道の銘酒「男山」から大吟醸酒が新たに発売され、さっそくいただいてみたところ、これが実に旨い。これに合う料理を考えてみましょうか、という次第です。
穏やかな旨味の大吟醸酒に、味噌の香りを
一般的に、吟醸酒には軽快で清涼感のある味わいがあるでしょう。しかし、今回用意した大吟醸酒には柔らかな旨味があり、食中酒として料理との幅広い相性が期待できそうです。
ということで、淡白で食べやすい鶏ささみを、ネギ味噌を香ばしく効かせて味わってみることにしました。鶏肉を食べるというより、味噌の香ばしさを肴にするという趣向です。
【材料】
- 鶏ささみ(中)......5~6本
- 炒りごま、黒こしょう......適量
<ネギ味噌>
- 味噌......大さじ3
- みりん......大さじ1
- 酒......大さじ1
- 砂糖......小さじ1
- ネギ(細かく刻んだもの)......大さじ山盛り1
- すりごま......小さじ1
【作り方】
ささみを観音開きに
まずは、食感を良くするため、スジを除きます。
イ. 引き抜きやすいように、スジのまわりに切れ目を入れます。
ロ. フォークでスジを挟みつつ、身を動かしてスジを抜きます。はみ出たスジをペーパータオルで掴むと、滑りません。
スジ自体を引っ張るのではなく、スジを掴んでいるほうを動かないように固定し、それを軸にして身をフォークでじわじわとスライドさせて引き抜きます。
ハ. スジを取ったあとにできた切れ目の左側に、切り込みを入れます。
ニ. 切り込みを開いて、身を外側に広げます。
続いて、上下を逆にして「ハ」と同様に切り込みを入れます。同じように広げたら観音開きのできあがり。多少ちぎれたり、穴が開いたりしても気にすることはありません。手で形を整えてあげましょう。
ネギ味噌をつくる
味噌をみりんと酒で溶き、砂糖・ネギ・擦りゴマを混ぜ合わせます。
焼く
イ. 魚焼きグリルにささみを並べ、中火で軽く炙ります。
ロ. 表面がほんのり白くなったら、ひっくり返します。
ハ. ネギ味噌を塗って、再び炙ります。
ニ. 味噌がこんがりと焼けたら頃合いです。好みの大きさに切って、盛り付けましょう。炒りごまや黒こしょうをかけると、香ばしさがより引き立ちます。
味噌の香味と調和する「北の稲穂 大吟醸」
北海道産の酒米で仕込んだ、北海道100%の大吟醸酒です。
男山株式会社は、北海道産の酒造好適米を使った醸造に早くから取り組んでいます。試行錯誤を繰り返し、酒米の性格と向き合いながら、これまで数種類の銘柄を造ってきました。その評判が良かったことや、道産米の品質や収穫量が近年安定してきたことをきっかけに、新たな「男山」の顔として開発されたのが「北の稲穂 大吟醸」です。
甘い香りに誘われてひと口含んでみれば、フルーティーな香味が豊かに広がります。さらに、柔らかな旨味を湛えた口当たりと軽やかな余韻が、テンポ良く呑み手の心を弾ませます。
料理とともに味わってみましょう。ネギ味噌は香味がふくよかになり、美味しさが増したように感じられます。旨味や甘味、味噌本来の味わいが舌の上に広がっていきます。
同時に、淡白なはずの鶏ささみから旨味がにじみ出てきました。酒の穏やかな酸味と調和しているのでしょうか。総じて、鶏ささみ味噌焼きは、よりほくほくと美味しくなり、箸が進みます。
一方、酒は味噌の辛さによって甘味が抑えられたせいか、シャープな味わいに変貌し旨さが冴え渡ります。良い肴を得て、キレ良く感じられ、気が付くとすいすいと杯が進んでいました。この両者、お互いがお互いを美味しくする、そんなスタイルで響き合っていました。
これなら、多くの料理とも相性を発揮しそう。またの機会には、旬の食材をたくさん揃えて楽しみたい。そんな食欲を抱かせる1本でした。
(文:KOTA/編集:SAKETIMES)