近年多様化したライフスタイルのなかで、ますます定着しそうなカテゴリーが「男の料理」
休日に時間をかけた本格料理を家族にふるまう人、家事分担で率先して台所に立ち日常的な炊事をこなす人など、さまざまいらっしゃると思いますが、ここでは普段あまり料理をしない人に向けて家呑みを新たな趣味にする料理(酒肴)づくりを提案したいと思います。「台所に立つのは照れくさい」なんて言ってる方はいませんか? 酒好きが高じて包丁を持ったと言い訳すれば「男子厨房に入らず」もなかったことにできるかも。
酒肴には新たな味覚「興味」を加えて
ところで、なぜ酒に肴はなくてはならないのでしょう?
「胃や肝臓に優しいから」は至極ごもっともですが、ここでは「楽しさが増す」を理由に挙げたいと思います。良い肴は酒を美味しくするだけでなく、季節感や酒との相性の善し悪しといった気づきに満ちているからです。しかもそれを自分で作る。となれば、おのずと創造力が高まりワクワク。楽しいことこの上ありません。
一般的に味わいは「五味」(甘味・酸味・塩味・苦味・辛味)に分類されますが、私は料理をいっそう美味しくするため、そこに「興味」を加えたいと思います。舌ではなく思考で感じる味覚とでもいいましょうか。これがこだわりの極意です。
さて、そんな興味をそそりそうなの今回の酒肴とは……。
「モッツァレラチーズの巾着」です。
お揚げとチーズは意外に美味しいと人気のある組み合わせ。チーズを上にのせてピザ風に焼くのも美味しいですが、今回は巾着スタイルでいきましょう。細かな味付けは不要。素材の美味しさだけで美味しく仕上がるので簡単です。
いざ作るべし、そして呑むべし!
今回は、2種類の具材(大葉、塩昆布)で作ります。
<材料>
・お揚げ 2枚(半分に切り、袋状に開いておく)
・モッツァレラチーズ 100g(1cm角に切っておく)
・大葉 2枚(刻んでおく)
・塩昆布 適宜
・マヨネーズ 大さじ1
・醤油 小さじ2
<作り方>
イ.切ったチーズをマヨネーズで和え、ふたつにわける。
大葉、塩昆布をそれぞれに混ぜて具を作る。
ロ.お揚げに具を詰める。
ハ.楊枝で口を留める
ニ.フライパンで、弱火でゆっくり焼きはじめる。油は不要です。
少し焼けたら裏返し、醤油を少しずつ塗ります。
それを数回繰り返し、こんがりと焼けたらしたらできあがり。
楊枝を抜いて盛りつけます
チーズが固いようなら、電子レンジで数十秒加熱するとトロリ感が倍増します。
さあできました! ふんわりとした食感のお揚げの中からモッツァレラがとろり。
見た目のイメージから、味わいはこってりしていそうですが、モッツァレラチーズのナチュラルな風味のおかげで、口の中に素朴な味わいが広がります。それにしても、主役はお揚げなのか、チーズなのか? 和洋どっちの料理かわからないところにも興味が湧いて面白い。
あわあせる酒は、豆製品や乳製品との相性を考え濃醇な味わいのものと思い、「雪の茅舎(ゆきのぼうしゃ)」を用意しました。
雪の茅舎 山廃純米 生酒(秋田県・齋彌酒造店)
知り合いの居酒屋でも時々嗜んでいますが「生」では初めてです。まずは冷蔵温度で。ほんのり甘酸っぱい香りと瀟洒(しょうしゃ)な口当たり。「あれ?買ったのは山廃だったよね」とラベルをあらためて確認するほど、軽やかに広がる旨みは吟醸酒を思わせます。
肴と合わせてみます。ん?おおっ?酒がす~っと口に吸い込まれていく。肴に誘われたかのように酒が自ら進んで……。美味しくて思わずごくごくとやってしまいそうなほどの、なんという相性の良さでしょう!
素晴らしいマリアージュ、だなんて、そんな洒落た言葉は照れくさい。古風ですが、日本の文化ですから日本語でと、酒と料理の相性が良いことを私は「良縁」と呼んでいます。かなりよいときは「またとない良縁」。実際の縁談話みたいでわかりやすいでしょ? 反対にほとんど相性を感じない場合は「縁がない」。イマイチのときは「縁が薄い」「縁遠い」となります。あ、話が逸れましたね。
酒の温度が室温に慣れていくと少しずつ旨みが高まってくるのが分かります。これはもしかしたら……。
燗もかなり良いだろうとの予感は的中。「きわめて良縁」です。
増した酸味に旨みが追随し、味わいがふんわりと、それでいてしっかりとした旨さを体現しています。そして、とても気持ちの良い余韻。少し前に食べたチーズ巾着の味が口の中に蘇るのが不思議です。まさに料理を引き立てる良い酒ですね。
ここまで来ると、酒が肴に合うのか、肴が酒に合うのかの話は鶏と卵のような関係ですが、この楽しさは縁が取り持つおかげ。今回の酒と肴の縁。私は「冷や」がとても美味しく感じました。そして肴が冷めてきたらお燗。この作戦が効果大だったと思います。ちなみに、この巾着は冷めても美味しいです。
(文:KOTA/編集:SAKETIMES)
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