「粕漬け」は、平安時代には既に存在していたという歴史の長い食品です。当時は、貴族の食文化において楽しまれてきた食べ物だったようで、これが庶民の口に入るようになったのは、江戸時代のことだそうです。
冷蔵設備が今ほど充実してなかった時代には、いかに食糧を保存するかが重要でした。魚や野菜をおいしく、そして長く保存する方法として、粕漬けは親しまれてきたのでしょう。
この記事では、酒粕を使ってつくる「卵の粕漬け」をご紹介します。
「卵の粕漬け」のレシピ
今回用意したのは、「雪の茅舎」を醸す秋田県・齋彌酒造店の酒粕です。東京・有楽町にある秋田県のアンテナショップ「秋田ふるさと館」で購入しました。
ひとくち舐めてみると、甘酒、味噌、ホワイトチョコレートなどのニュアンスを感じる、綺麗な味わい。そのままでも、なかなかおいしい1品です。1kgで324円という値段にも驚きました
1.粕床づくりと下ごしらえ
まずは粕床の準備です。
「酒粕50gに、日本酒小さじ1、みりん小さじ1、塩ひとつまみ」という配分で合わせています。作りたい味や漬けるものによってアレンジしても良いですが、少し水分があった方が床が滑らかになるので、漬けやすいです。
卵は、固ゆでにして殻をむいておきます。
2.漬け込み
準備ができたら漬け込んで行きます。
ラップの上でゆで卵を置き、粕床を塗りつけます。まんべんなく塗れたらラップで包み、冷蔵庫に保存します。タッパーやジップロックに入れておくのが良いでしょう。
漬けたら冷蔵庫に入れて待ちましょう。
左から順に、1日間、3日間、1週間漬けたものです。画像では少しわかりづらいですが、漬ける時間が長くなる毎に、色も酒粕の色に近づいています。
それではいただいてみます。
まずは、丸一日漬けたもの。白身の弾力、黄身のほっくりした食感が残っていて、酒粕風味のゆで卵という状態です。
次に、3日間漬けたもの。白身がやや固くなり、ぶちぶちとちぎれるような食感に変わっています。黄身の色もオレンジに変化していますが、中心に近い方は黄色味が残っています。
食べてみると、ゆで卵のほっくり感はなく、卵と酒粕の香りの絡み方がより綿密になっています。
最後に、1週間漬けたもの。香りの濃厚さはもちろんのこと、黄身の食感と見た目が特徴的です。
風味が最も凝縮されており、どろりと濃厚な食感は、珍味と呼ぶにふさわしい味わいです。
いろいろな食材でも試してみたい「粕漬け」
粕漬けは手間はかかりますが、1度漬けてしまえばあとは放っておけば良いので、それほど大変ではありません。酒粕はあまりポピュラーに使われている調味料とはいえませんが、粕床は、水分を抜き塩を加えることで繰り返し使えます。
卵のほかにも、野菜、魚、肉などを漬け込むだけで、素材の深みを増す優れものなので、みなさんも気軽に使ってみてください。