業界に先駆けて、吟醸酒や生酒にチャレンジ

龍力 特別純米 生酛仕込み(株式会社本田商店/兵庫県姫路市)のキャップの写真

本田商店の本田家は、元禄時代から播州杜氏の総元締めとして、酒造りに従事してきました。念願だった自社での創業を果たしたのは大正10年(1921年)。主要銘柄は「龍力」で、創業から変わっていません。

現会長である3代目・本田武義氏が、革新的な取り組みを進めていきました。昭和45年(1970年)に、他の蔵に先駆けて、いち早く吟醸酒造りを開始。同51年(1976年)には、生酒がまだ商品として扱われていなかった時代にもかかわらず、業界初のしぼりたて生酒「蔵出し新酒」を発売しました。同54年(1979年)には、山田錦を35%まで磨いた銘酒「大吟醸 米のささやき」を発売。そして平成4年(1992年)、使用する原料米をすべて酒造好適米に限定します。

こだわるのは、特A地区の山田錦

龍力 特別純米 生酛仕込み(株式会社本田商店/兵庫県姫路市)の裏ラベルの写真

蔵がこだわるのは酒米、そのなかでも山田錦に強くこだわっています。山田錦は、"酒米の王様"とも呼ばれる品種。昭和11年(1936年)に品種登録されてから、山田錦の総合力を超える酒米はいまだに出てきていないといわれる絶対王者です。山田錦の特徴は大粒で心白が中心にあり、かつそれが大きいこと。雑味の原因となるたんぱく質や脂質が少ないことも挙げられます。甘辛酸のバランスが良く、濃醇で幅のある味わいになるといわれています。

同蔵が使用する酒米のうち85%が、兵庫県・播州地区の山田錦です。播州地区は日本最大の山田錦の生産地として知られています。そのなかでも、さらに特A地区(超優良地帯)の山田錦のみを使用しているというこだわりよう。特A地区には「山間の丘陵地帯であること」「8月下旬から9月上旬にかけて、昼夜の温度差が15℃以上あること」などの条件があり、加東市や三木市の一部のみが指定されています。まさに、"酒米の王様"のさらに王様とも呼べるような山田錦を使用しているのです。

「燗酒コンテスト」で金賞を受賞した"燗の銘酒"

龍力 特別純米 生酛仕込み(株式会社本田商店/兵庫県姫路市)のボトルと徳利の写真

今回紹介する、生酛仕込みの特別純米酒も、特A地区の山田錦を100%使用した一品。山田錦らしい丸いふくらみと優しい旨味、蒸した米の香り......それらすべてを生酛らしいしっかりとした酸が支えています。どっしりとした味わいながらも、まったく重さを感じません。後味もスパッとキレていく印象です。

冷やしても美味しいですが、燗にすると、米の旨味・甘味がさらに出てきて、眠っていた複雑味が増していきます。さばけが良く、ホッとする味わい。ぬる燗はもちろん、50℃以上に上げてからの燗冷ましも抜群です。どんな食事にでも合わせられるでしょう。特に、濃い味付けのおつまみや塩辛などの珍味によく合いそうですね。寒い時期の晩酌にぴったりなお酒です。「燗酒コンテスト」で何度も金賞を受賞しているので、"燗の銘酒"と言っても過言ではないでしょう。

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