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さかなと鬼太郎のまち 鳥取県境港市で醸される港の銘酒「千代むすび」の酒造りを体験!

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鳥取県の最西部、日本有数の水産漁港である境港のほど近くに、千代むすび酒造はあります。銘柄名でもある「千代むすび」は、"永遠に人と人との幸せを結ぶ絆"を意味しているのだそう。港の近くで造られる酒なので、境港が誇るマグロやカニなどの魚介類に合う、しっかりとした味わいの日本酒で多くのファンに愛されてきました。

今回は、2泊3日で行われた酒造り体験をレポートします!

蔵人の朝は早い。仕事は早朝5時スタート!

内容は日によって少しずつ変わりますが、おおよそ以下の流れで作業が進みます。

  • 早朝:全タンクの櫂入れ、検温
  • 午前:蒸米、麹室への引き込み、種切り
  • 午後:仕込み、洗米、出麹、水汲み、掃除、洗濯
  • 終日:精米

初日は午前から、2,3日目は早朝5時からのお手伝い。蔵のみなさんがとても優しく、せっかくだからとたくさんの工程を体験させていただきました。

精米・洗米

酒造りに使われる米は、蔵に併設された精米所で精米されます。

精米作業そのものは蔵の方が担当。私は精米された米が入ったおよそ30kgの米袋を精米所から運び出し、洗米の単位である10kgずつに仕分ける作業をしました。

米袋を担ぎ、狭い通りを抜けて台車に積み込み、運んでいきます。白衣のまま仕事をしてしまったために、米袋に付いた米糠(こめぬか)が白衣に付着してしまい、蔵の方から注意をいただく場面も。米糠を蔵の中に持ち込むと、造りに悪影響を与えてしまうのだそうです。

精米した米はとても小さく、手に水分があるとくっついてしまいます。

パラパラとこぼしてしまわないように注意しながら、大きなボウルを使って重さを量り、仕分けました 。

秒単位で時間を計りながら、少量ずつ洗っていきます。

麹造り

蒸しあがった米を適温まで冷まして、麹室へ運びます。

蒸したての米を扱うのは炊飯器の中へ指を入れるのと同じようなもので、あまりに熱く最初は耐えられませんでした。「下からひっくり返すと熱くないよ」と教えていただき、なんとか温度を下げることができましたが、中腰の体勢もきつく、正直手を抜いてしまいたくなります。

しかし蔵の方々は手を抜くどころか、その日の気温などを鑑みて、より均一に、より適温になるように手際よく冷ましていきます。ひとりひとり手際が異なり、それぞれが自分で最善の方法を考え、確立していったように見えました。

蒸米に麹菌を振りかけ、2日かけて麹を造ります。

普段食べている米と比べて、精米してある分とても小さく、想像よりもずっと早く冷え固まっていきます。麹菌が均一になるように、米をひっくり返しながらほぐしていきます。

蔵の方が麹菌を振りかけている最中は、米に対して均一にかかるよう、文字通り息を殺して見守りました。麹室の中は蒸し暑く体力を使います。

仕込み

適温まで冷ました米に再度手を入れ、パラパラにした後で、仕込みタンクへ入れていきます。少しでも美味しくなるように想いを込め、時間がある限り手を入れていたのが印象的でした。

櫂入れは液体ではなく個体を混ぜているような感覚で、均一にするのは本当にたいへんな作業。他にも毎朝の櫂入れや検温、ヤブタで搾った後の粕剥がしなども体験しました。

洗い物

一番多くの時間を割いた工程が洗い物と掃除でした。タンクの仕込みが終わると、米を運んだ数十枚の布や櫂棒、温度計などを洗い、タンクのまわりをホウキで掃きます。杜氏の目は厳しく、洗い物ですら気を抜くことはできませんでした。

醪が入っていたタンクの底は、ワインボトルのように山型になっています。熱湯が足にかかったり、滑って転んだりと、ひとりでてんやわんや。蔵の方が笑っていました。

朝の蒸米からはじまり、午前の室仕事、掛米の仕込み、午後の室仕事、洗米、精米。一日中「米」を触り続ける仕事なんだと衝撃を受けました。やっぱり日本酒は米から造る酒なんですね。

文字通りの力強い味わい。鳥取県の酒造好適米「強力」にこだわる

千代むすび酒造には、強力(ごうりき)という鳥取県産の酒造好適米を使った酒があります。強力は穂の長さが150cmもあり、背の小さい人が田んぼに隠れてしまうほどの高さまで成長するそう。ただその高さゆえに栽培が難しく、戦後、農業の変遷に伴って姿を消してしまいました。

しかし美味しい酒を造るために復活が望まれ、1989年(平成元年)に、わずかに残っていた種籾から栽培を再開。1998(平成10年)には、酒造りに使えるまでに至りました。強力で仕込まれる酒の特長は、どっしりとした力強い味わいと、ふくよかな香り。千代むすびの代名詞ともいえる酒米です。

awa酒として世界へ!千代むすびの挑戦

スパークリング日本酒「CHIYOMUSUBI SORAH」の開発現場にも立ち会うことができました。瓶を逆さにして口に滓(おり)を溜めておき、抜栓時の勢いで滓を飛ばし、すぐに指で押さえ、泡を落ち着かせてから打栓をします。蔵の方もこの日が初挑戦とのことで、最初の1本は中身が半分以上なくなってしまいましたが、そのあとは手際よく作業していました。

この「CHIYOMUSUBI SORAH」は、一般社団法人 awa酒協会によって、世界の乾杯酒を目指す"awa酒"として認定された逸品です。

名前の由来でもある「永遠に人と人との幸せを結ぶ絆」を大切にしながら、新しい取り組みにも挑戦する千代むすび酒造。これからも、美味しい酒を期待しています。

(文/小林健太)

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小林 健太

1982年、板橋区高島平生まれ。2016年に約12年務めた会社を退職し、酒屋修行のため1年間全国の酒蔵を訪問。2017年6月、実家である板橋区高島平の若松屋酒店に入社。SSI認定 酒匠、唎酒師、焼酎唎酒師。

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