日本酒の原料は米。ワインの原料はブドウ。原料が違うことはほとんどの人が知っていることでしょう。
では、日本酒とワインでは、このほかにどのような点が異なるのでしょう。
今回は、日本酒とワインの違いについて、造り方や楽しみ方の観点から説明します。
日本酒もワインも同じ「醸造酒」
醸造酒、蒸留酒、混成酒......世の中にあるお酒は、その製造方法によって大きく分類することができます。そのなかでも、日本酒とワインは、同じ「醸造酒」というカテゴリーに分類されます。大きく分けると、基本的な製造方法は同じなんですね。
「醸造酒」とは、穀物や果物を酵母の力でアルコール発酵させたお酒のこと。日本酒とワインは、この発酵の流れに大きな違いがあるのです。
酵母がアルコール発酵するためには、糖分が必要です。
ワインの原料であるブドウには、もともと糖分が含まれているため、酵母を加えてあげればそのまま発酵が進みます。これを「単発酵」と呼びます。
一方で、日本酒の原料である米には、糖分が含まれていません。そのため、麹菌の力を借りて、米に含まれるデンプンを糖分に変化させる必要があります。そして、デンプンが変化した糖分を酵母の力でアルコール発酵させるのです。このように、糖分への変化とアルコールへの変化がわかれている発酵のことを「複発酵」といいます。
ちなみに、日本酒やワインと同じ「醸造酒」であるビールも、原料に糖分が含まれていないため、デンプンの糖化と酵母によるアルコール発酵が別々に進みます。
ビールの場合は、糖化と発酵の工程が別々のタンクで進行しますが、日本酒の場合は、同じタンクの中で同時に進んでいきます。前者を「単行複発酵」、後者を「並行複発酵」といいます。
「並行複発酵」は、日本酒特有の発酵形式です。ワインやビールに比べて、より複雑で繊細な発酵とも言えるかもしれません。
アルコール度数や飲み方の違い
アルコール度数を比較すると、一般的な日本酒が15〜16度であるのに対して、ワインは10〜14度ほど。ワインのほうが少し低いんですね。
また、日本酒もワインも基本的にはストレートで飲むことが多いです。そして、日本酒は飲むときの温度帯がもっとも幅広いお酒とも言われています。もちろん、ワインをあたためて飲む文化もありますが、日本酒は5℃前後に冷やしても、60℃近くまであたためても美味しく飲むことができるのです。
また、ワインは専用のグラスで楽しむことが多いですが、日本酒は酒器の種類がさまざまです。最近では、日本酒をワイングラスで提供する店も増えてきました。
味わいだけで判断すると、日本酒とワインはまったく違う種類のお酒だと思ってしまうかもしれません。しかし、どちらも「醸造酒」。原料である米やブドウの魅力を最大限に活かしたお酒なのです。
それぞれの飲み方や特徴を知って、さらにお酒を楽しんでくださいね。