常に変革を模索しながら成長を続ける「獺祭」の蔵元、山口県の旭酒造が、「斬新な発想で『獺祭』のデザインを提案してほしい」という趣旨で開催している「DASSAI DESIGN AWARD 2019」。そのグランプリと上位入賞者が2020年1月に発表されました。

受賞式の様子

今回のデザインアワードのテーマは、「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」のボトルラベル(720ml)と化粧箱をデザインするというもの。このお題に対して、性別・年齢・職業・国籍・プロ・アマを問わず、優れた感性を持つクリエイターたちから、748点もの作品が寄せられました。

グランプリのモチーフは「正岡子規」

旭酒造の桜井博志会長による厳正な審査の結果、グランプリには、長野市在住の小林浩司さん(グラフィカ代表・52歳)のデザインが選ばれました。

グランプリ・小林さん

見事受賞した小林さんには、賞金100万円と副賞の「Dassai Joel Robuchon」への招待が贈られるほか、小林さんがデザインした「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」のラベルデザインと化粧箱が商品に採用され、2月出荷分から約2ヶ月間、日本全国の正規販売店にて数量限定で販売されます。

トロフィーと小林さん

グランプリを獲得した小林さんは、受賞の喜びを次のように語ってくれました。

「実は募集締め切りの2週間前になって、初めてアワードの存在を知りました。ちょうど独立して10年を迎える節目だったので、応募してみようという気持ちになったんです。

デザインの構想を練るため獺祭のことを調べていると、明治の俳人、正岡子規が自らを『獺祭書屋主人』と号していたことを知りました。

それならばと、ストレートに子規の肖像画を題材にし、子規の横顔を手書きで描くことで、旭酒造が目指す『酔うため、売るための酒でなく、味わう酒をもとめて』という趣旨も表現できると思いました。子規の横顔を3枚描き、その中から一番と思う1枚を選んで応募しました。

私はデザインというものは、無駄を限りなくそぎ落としてシンプルにするものだと思っているので、子規の横顔も最小限のラインで描き、着色もしませんでした。そぎ落とすことは、米を磨いて造る純米大吟醸酒にもつながります。

正直、選ばれる自信はありませんでしたが、この賞を励みに、人に選ばれ人が喜ぶような仕事をしていきたいと思います」

「獺祭」の世界観を伝えるデザインの力

受賞式

審査結果について桜井博志会長は、次のように話しています。

「海外からの応募もあって、前回の倍近い作品の中から選ぶのには悩みもありました。ものすごく斬新なものから、古典だなあと感じるものまで幅広く、多彩な作品が寄せられました。

そのなかで、今の獺祭を最もよく表現してくれているのが小林さんの作品でした。実は正岡子規を題材にしたデザインはもう1点ありましたが、私の直感と好みでこちらを選びました」

グランプリ・小林さん

近年はお酒を選ぶ基準のひとつとして、ラベルのデザインを重視する人が増えているといいます。特に贈答用の日本酒選びは、送り手のセンスを存分に発揮できる機会。「獺祭」のグランプリ受賞ラベルのように、ひと目で目を引き、記憶に残るデザインのものを選んでみるのも、日本酒の楽しみ方のひとつといえるでしょう。

(取材・文/空太郎)

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