10月23日、フランス・パリにて、現地の人に「獺祭」を体験してもらうイベント「パリ獺祭の会」が開催されました。会場となったのは、"フレンチの神様"と呼ばれるジョエル・ロブション氏と「獺祭」がコラボした「Dassaï Joël Robuchon」です。
これまで、「獺祭の会」は日本国内の各地とニューヨーク、台湾で行われてきましたが、パリでは初めての試み。世界中から美食家が集まる食の中心地で、日本酒はどのように受け入れられるのか。イベントの様子をお伝えします。
パリから「獺祭」を発信する「Dassaï Joël Robuchon」
2018年4月にオープンした「Dassaï Joël Robuchon」は、1階が「獺祭」を使ったケーキやパンを販売するパティスリー、2階はお酒と軽食が楽しめるバーとティーサロン、そして3階に「獺祭」の醸造元・旭酒造とジョエル・ロブション氏が監修した本格レストランがある、パリにおける「獺祭」の重要な発信基地です。
「パリではまだまだ日本酒が浸透していないと感じています。高級ホテルでも劣化した日本酒が平気で並んでいる。20年前のニューヨークのような状況です。『獺祭』を含めて、日本酒の力はこんなものではありません」と、パリの日本酒事情について話す旭酒造の桜井会長。
「パリはブランド戦略の要であり、非常に重要な場所です。『Dassaï Joël Robuchon』で日本酒と『獺祭』を知ってもらって、ブランドとしての地位を確立しなければ、ほかの市場に出て行くことは難しいと感じています」と、同店の重要性についても語りました。
ふだんは旭酒造の海外戦略部で、フランスへの輸出営業を担当するケビン・ルビスさん。フランスに来たのは5年ぶりだそう。
「日本酒が蒸留酒だと間違えられることが多いパリですが、5年前よりも正しい知識が浸透してきたように思います。このお店は『ジョエル・ロブションの料理を食べたいから来た』『日本酒のことはよく知らない』というお客様にもお越しいただいています。そんな方にこそ『獺祭』を試飲していただいて、『美味しい、また飲みたい』と言っていただくことが勝負です」
「獺祭の会」を各地で開催するのも、実際に「獺祭」を飲んでもらう機会を増やすため。「美味しいお酒は飲めばわかってもらえる」という桜井会長の言葉通り、当日は「獺祭」を楽しんでもらう工夫が至る所に見受けられました。
日本×フランスの絶妙なマリアージュを楽しむ
受付で手荷物を預けると、会のしおりと「獺祭 磨き その先へ」の引換券が手渡されます。会場では、「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」「獺祭 純米大吟醸 磨き三割九分」「獺祭 純米大吟醸45」が飲み放題。そして、「獺祭」の最高峰「獺祭 磨き その先へ」は引換券で一杯を提供するスタイルです。
立食ということもあり、参加者は異なる銘柄と料理の組み合わせを自由に楽しむことができました。
ウェルカムドリンクの「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」を片手に会場へ進むと、まず目を引くのが生牡蠣のスタンド。そのままでももちろん、レモンや酸味のあるソースなどで様々な味わいを楽しめます。牡蠣を提供するMarcel Lesoilleさんは牡蠣殻むきの世界チャンピオン。1分で36個の殻を剥けるのだとか。
そのほか、味噌の風味を添えたフォアグラ、きゅうり、サラミなどの前菜に始まり、ノルウェー産サーモンのスモークや、アボカドの巻き寿司が並びます。中盤には、オレンジのソースを添えた茶碗蒸し、魚卵のタルタル、そしてデザートのマカロンとチーズなど、どれも日本料理とフランス料理の境目を行き来する絶妙な料理が提供されました。
現地に住むフランス人の参加者に、日本酒について伺いました。
「日本酒が面白いのは、料理と合わせて楽しむとき。お酒だけで飲むより、料理の味も引き立ててくれて奥深いです。どれも美味しかったのですが『獺祭 純米大吟醸45』が一番辛口で好みでした。お米の磨き具合でこれだけ味が変わるのも日本酒の魅力ですよね」(女性)
「僕も彼女と同じ意見です。『獺祭 純米大吟醸45』が一番素朴で滋味深いと感じました。どの料理ともよく合っていたと思います。牡蠣は完璧だったし、サーモンが特に良かった。ソースをつけないで合わせた方が、より素材の味を引き立てていたと思います。今まで試したことのない組み合わせで、新しい発見でした」(男性)
「周りの友達にも日本酒を勧めてみようと思います。まずはお酒が好きな友達からですね。お酒好きなら、いろいろなお酒を試してみたいと思っているはずですから」(女性)
さすがはマリアージュの本場。料理との相性を探りながら、日本酒を楽しんでいる様子でした。
また、現地に住む日本人女性のおふたりにもお話を伺いました。
「今回いただいた料理は本当によく考えられていて、日本人にもフランス人にもマッチする内容だと思います。例えば、茶碗蒸しは甘くないプリンのようで、フランス人には意外とハードルが高いんです。でも、今日いただいた茶碗蒸しはオレンジの酸味と甘みがあって、最初にぴったりな味わいだと感じました
「フランス料理は、ワインやシャンパンに合わせて料理を組み立てています。しかし、今回の料理は『獺祭』に合わせて料理が組み立てられていて、『こんなに相性がいいんだ』と新しい発見ができました」
美食家が集まるため、あちこちでお酒や料理の話が飛び交っているのもパリならではの風景です。熱心にスタッフと話をする方も見られました。
パリで「獺祭」が愛される未来を目指して
「獺祭」のブランディングについて、欧州でのミッションを統括する飯田薫さんにお話を伺いました。
「お店ができる前は『獺祭』を飲んでいただく機会を増やすため、イベントなどで売り込みをしていました。今は一転して、レストランでお客様に『獺祭』の話をしながら飲んでいただいています。もちろん、まだ『獺祭』の話をする前に日本酒自体の説明をしなければいけない段階ですが、ワインを飲むのと同じように、常連のお客様に自然と『獺祭』を飲んでいただけることが増えてきました。
お店に来ていただいた方がファンになってくれて、『こんな会に行って、すごく美味しかった』と周りに話してくれる。それがきっかけになって、またお店に来てくれるんです。今日はこれだけの人が来てくれて、本当に驚いています。淡々と積み重ねてきたものが、実はこんなにも広がっていた。お店が『獺祭』の発信基地として、しっかりと機能している結果だと思います」
大盛況のうちに幕を閉じた「パリ獺祭の会」。来場者とスタッフ、どちらの顔にも充実した表情が浮かぶ素晴らしい時間でした。
しかし、華やかな舞台の裏側には、「獺祭」と日本酒を地道に伝え続ける旭酒造のたゆまぬ努力があったのです。旭酒造の挑戦は、今日も続きます。
画像提供:旭酒造(トップ画像)
(文:TK/編集:SAKETIMES)
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