2019年7月7日、宮城県の7蔵が結成した酒蔵ユニット「DATE SEVEN(ダテ セブン)」の5季目となる日本酒「DATE SEVEN ~Episode V~」が発表されました。

「DATE SEVEN」では造りの工程を分け、蔵ごとに担当を設けることでひとつの日本酒を共同醸造しています。1年に1回、ユニット名にちなんで7月7日にリリースされるそのお酒は、毎年即完売の人気商品です。

1年目は純米大吟醸酒、2年目はスパークリング、3年目は生酛酒母で造った純米大吟醸酒、4年目は食用米であるひとめぼれの純米大吟醸酒でしたが、5年目は「蔵の華」を30%精米した純米大吟醸酒に挑戦しました。

5季目は「蔵の華」で醸す純米大吟醸酒

DATE SEVENのみなさん

前列左から新澤さん・岩崎さん・伊澤さん。後左から伊東さん・川名さん・澤口さん・佐藤さん。

5季目の分担は以下のようでした。

今回のリーダー蔵は宮城県北東部の水産資源豊かな街、石巻市に蔵を構える墨廼江酒造。醸す場所と仕込みの全体管理を行います。

「DATE SEVEN ~Episode V~」の造りでは、ユニットを結成して以来、最も米を磨いた30%精米のお酒に挑戦することを決めました。

さらに、7蔵の酒造りの融合を意識して、他の6蔵から仕込み水を一升瓶に詰めてたくさん送ってもらい、それを3段仕込みの3段目となる留添の仕込み水に使ったそうです。

それぞれの担当者は次のようにコメントしていました。

新澤醸造店の新澤巌夫さん

新澤醸造店 新澤巌夫さん(精米):
「昨年、東日本大震災で被災した旧蔵のある大崎市に、最新鋭の精米工場を作りました。今季の原料米となった『蔵の華』も、その新しい精米機で削ったものです。

うちの蔵は『蔵の華』の精米を得意としていますが、米が入庫するまでは安心できませんでした。でも、実際に届いた米は丁寧に乾燥処理がなされていて、おかげでねらい通りの精米ができたと思います」

仙台伊澤家勝山酒造の伊澤平蔵さん

仙台伊澤家勝山酒造 伊澤平蔵さん(洗米):
「実は、うちの蔵では『蔵の華』を使っていません。米が違えば洗い方も違うので、事前に墨廼江酒造さんからレクチャーをしっかり受けました。墨廼江酒造さんの洗米機はうちと同じ、水流と泡で洗う最新タイプのものでしたので、無事に洗米作業ができました。

一方、糠を落とすためにかけるシャワーのやり方や浸漬の方法については微妙に異なり、どちらが正解というよりも、蔵によって異なる流儀があることを再認識しました」

山和酒造店の伊東大祐さん

山和酒造店 伊東大祐さん(麹):
「今回使ったもやし(種麹)は純米大吟醸に使う珍しいタイプのものですが、幸いうちの蔵でも使っているものだったので安心しました。ただし、蒸した米にもやしを振る容器が異なり、ひと振りで出てくるもやしの量が微妙に異なるので、慣れている墨廼江酒造さんから情報をもらって慎重に振りました。

麹室は、うちが二部屋方式に対して墨廼江酒造さんは一部屋方式でしたが、作業の進め方はほぼ同じで、スムーズにいい麹ができました」

寒梅酒造の岩崎健弥さん

寒梅酒造 岩崎健弥さん(酒母):
「酒母造りでは、糖化溶解を促進させるために、熱湯を入れた暖気樽(だきだる)を酒母タンクに入れる『暖気入れ』を行います。うちの蔵では、暖気樽を入れると20分程度は漬けておくのですが、墨廼江酒造さんでは暖気樽をぐるぐると円を描くように回すことで酒母タンクの品温を短時間で上昇させ、目的の温度になると速やかに引き上げるやり方でした。

そのような方法での暖気入れは初めて見たのですが、非常に参考になりました。できた酒母は酢酸イソアミル系のフレッシュな香りが漂う、望ましい仕上がりでした」

川敬商店の川名由倫さん

川敬商店 川名由倫さん(醪):
「品のいい香りをつくる大吟醸の酵母は発酵力が比較的弱いので、醪が低温すぎてもいけないし、酒米がよく溶けすぎているような濃糖状態であることも望ましくありません。ちょうど、仕込んで14日目に蔵を訪れたのですが、そこまでの経過が順調だったので、それを乱してはならないと気を使いました。

醪管理の一環として、水を追加投入する『追い水』を行うのですが、私は早く追い水をしたいタイプです。一方、墨廼江酒造さんではじっくりと様子を見てから追い水をするようで、そのタイミングと量の違いを勉強させてもらいました」

萩野酒造の佐藤曜平さん

萩野酒造 佐藤曜平さん(上槽):
「各蔵がそれぞれ担当した工程をしっかりとこなしてくれたおかげで、醪は理想的な経過で来ていました。それだけに上槽(搾り)の判断は慎重になりました。というのも、上槽は早すぎても遅すぎても、お酒に違和感のある香りが出る恐れがあるからです。

醪の様子を見ながらターゲットの日を絞り込み、最終的に一番いいタイミングで搾ることができました」

リーダー蔵が振り返る5季目のねらい

墨廼江酒造の澤口康紀さん

リーダー蔵を務めた墨廼江酒造の澤口康紀さんは、5季目の「DATE SEVEN」を次のように総括していました。

「7蔵の仕込み水を混ぜて使うのは、チームとしての7蔵の個性がミックスされることで最高のお酒になるのではないか、との思いからでした。実際に届いた仕込み水を飲んでみると、それぞれに個性があって面白かったです。

造りにあたって目指した酒質は墨廼江らしい"派手さを抑えた旨い酒"だったので、『DATE SEVEN』に使う酵母は去年とタイプを変えて、爽やかな香りになるように県(宮城県産業技術総合センター)に用意してもらいました。

リーダー蔵の責任は一部の役割を担うのに比べて重く、神経を使いました。いまは肩の荷が下りた気分です。」

「DATE SEVEN ~Episode Ⅴ~」をいただいてみると、30%まで磨いた純米大吟醸酒の軽快さや透明感を持ちつつ、甘味や旨味に適度な渋味がアクセントになっている飲みごたえのある仕上がり。今季の「DATE SEVEN」が目指したという"旨い酒"がまさに再現されています。

5年目を迎えた「DATE SEVEN」ですが、毎年、造りを通して個性の再発見や醸造技術の共有が行われていることを感じます。来季の造りも楽しみになるインタビューとなりました。

◎商品概要

  • 「DATE SEVEN ~Episode Ⅴ~」
  • 特定名称:純米大吟醸
  • 原料米:蔵の華
  • 精米歩合:30%
  • アルコール度数:16度
  • 内容量:720ml
  • 価格:2700円(税抜)

(取材・文/空太郎)

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