ワインセラーメーカー・さくら製作所が、2020年に発売した日本酒セラー「ZERO CHILLED」。徹底された温度管理とスタイリッシュなデザインが日本酒ファンの心を掴み、現在でも好調な売れ行きを見せています。
そして2021年7月、その上位機種となる「氷温M2」が発売されました。大きな特徴は、その名の通り「氷温」。「2温度管理」はそのままに、設定可能な温度帯を「-2℃〜22℃」まで広げたことにより、さらに安定した品質で日本酒を保管できるようになりました。
また、日本酒とワインを同時に保管できることも特徴のひとつ。「ZERO CHILLED」の機能をさらに高めたといいますが、いったいどんなこだわりが詰まっているのでしょうか。さくら製作所の代表取締役・穂積亮雄さんと、取締役・奥村政章さんに話をうかがいました。
上級者のニーズにマッチした1台
さくら製作所の設立は2014年。ワインセラーを取り扱う大手商社に勤めていた穂積亮雄さんが創業したベンチャー企業です。2020年には日本酒セラー「ZERO CHILLED」を発売し、大きな反響を呼びました。
日本酒セラーを開発したのは、「ワインと日本酒をいっしょに保存している」というお客様の声がきっかけ。また、「日本酒をもっと低い温度で保管したい」との意見も多く、日本酒セラーの開発に踏み切ったといいます。
「0℃〜22℃」まで設定できる幅広い温度帯と、上下の庫内で異なる温度を設定できる「2温度管理」、そしてスタイリッシュなデザイン。「ZERO CHILLED」はこれまでにない日本酒セラーとして話題を呼び、家飲み需要の拡大もあったことから、好調な売れ行きとなりました。
「ただ、お客様からは『もう少し大きいセラーがほしい』という意見もありました」と穂積さんは話します。
「『ZERO CHILLED』は一般家庭で気軽に使っていただけるよう、コンパクトさを重視していたので、本当に日本酒が好きな方には収納本数が少し物足りなかったようです。日本酒の保管に適した、より大型のセラーをつくることが次の目標でした」
こうして、次なるセラーのコンセプトを考え始めた穂積さん。そしてあるとき、目に留まったのは飲食店でした。
「お酒と料理の味わいが多様になった今、フレンチや和食といった枠にとらわれず、ワインと日本酒の両方を提供している店は珍しくありません。また、本当にお酒が好きな方は、家でワインも日本酒も楽しみますよね。うちはこれまで両方の専用セラーを作ってきましたから、そのノウハウを使えば、ワインと日本酒が同時に保管できるセラーが作れると思ったんです」
さらに、今回さくら製作所が挑戦したのが「氷温」の実現。日本酒の劣化を引き起こす化学反応は、低温であるほど緩やかになるため、0℃以下の氷温で保管することで、日本酒本来の味わいを長くキープすることが可能です。
また、日本酒を氷温環境で熟成させる「氷温熟成」では、通常よりもゆっくりと熟成が進むため、みずみずしい風味を残しつつも、角が取れたような丸い口あたりを楽しむこともできます。
「氷温M2」の開発を担当した奥村さんは、次のように話します。
「より上級者やプロの方々のニーズに合ったセラーにするため、氷温への挑戦を決めました。目指した温度は『-2℃』。もちろん、氷温管理がすべてだとは思っていませんが、氷温という選択肢があることは、それだけ日本酒の楽しみ方を広げてくれるはずですから」
どんな場面でも"妥協"をしない
ベンチャー企業らしく、常にさくら製作所が意識しているのが「まだ世の中にないモノをつくる」こと。ただ、それを実現するためには、相応の難しさを伴います。「氷温M2」においても、その開発の道のりは試行錯誤の連続でした。
例えば、「氷温M2」の特徴のひとつである「-2℃」を実現するには、「ZERO CHILLED」よりもパワフルな冷却装置が必要です。もっとも簡単な解決策は、大きな冷却装置を使うこと。ただし、そのぶん庫内のスペースが圧迫されてしまうだけでなく、モーター音も大きくなってしまいます。
「強い冷却機能を備えながら、容量や静音性、そしてコストにも妥協しない」というのが、さくら製作所が目指す「氷温M2」の姿でした。
「妥協するのは簡単ですが、そういう企業の姿勢は、すぐにお客様に見抜かれます。それに、酒蔵のみなさんが手間ひまをかけて造ったお酒を、そんなセラーに入れるのは失礼ですから」(穂積さん)
難しかったのはそれだけではありません。日本酒とワインでは、最適な保管温度が大きく異なります。日本酒の理想的な保管温度は-5℃~0℃ほどですが、ワインは13℃〜15℃ほどが目安です。ひとつのセラーの中でこれほどの温度差を実現し、維持するのは簡単ではありませんでした。
そんな困難を乗り越えるために新しく開発されたのが、ワインの温度管理に最適な特許技術「ディフューズクーリングテクノロジー」です。
ワインの温度管理において、これまでさくら製作所が使用してきた技術には、「冷気の移動距離が長いほど風速が落ちる」という課題がありました。セラーが大きくなるにつれて冷気が庫内の隅々まで届かなくなり、温度の維持が難しくなってしまうため、大型化には限界があったのです。
その点、冷気を庫内にゆるやかに放散する「ディフューズクーリングテクノロジー」を導入することで、ワインの液体温度をほぼ変化させることがない、完璧に近い温度管理を実現しただけでなく、セラーの大型化も叶えました。
また、この技術は「ワインだけでなく日本酒にもメリットがある」と奥村さんは話します。
「従来のセラーは、庫内の上部に冷気が当たりがちでした。そうすると、縦置きで保管する日本酒は液体の量が少ない上部から冷えていくため、全体が均一な温度になるまでにムラが発生してしまいます。
一方、『ディフューズクーリングテクノロジー』では冷気を分散させることができるため、ボトル全体を均一に冷やすことができるんです。劣化の一因となるポイントをできる限り取り除いているので、『氷温M2』は日本酒もワインも安心して保管できるセラーになっています」
さらに、悩み抜いた末に搭載したのが「真空断熱ガラス」です。
「高い断熱性能を持つ真空断熱ガラスは、もともと住宅などのために開発されたもので、かなり高価です。正直、コストを考えると悩ましい決断でしたが、氷温管理を実現するために搭載を決めました。増えたぶんのコストについては、価格には反映せず、製造工程を見直すことで対応しています」(穂積さん)
真空断熱ガラスは、保冷効果の向上だけでなく、見た目の美しさも特徴。従来のガラスよりも透明度が高いため、瓶のラベルをより綺麗に見せてくれます。スタイリッシュなデザインに磨きがかかり、よりインテリアに馴染むセラーとなりました。
機会が増えた家飲みを、もっと楽しく
「氷温M2」は、上段は「-2℃〜22℃」、下段は「0℃〜22℃」に設定可能です。日本酒とワインを同時に保管できるのはもちろん、棚を入れ替えることで、日本酒もしくはワインだけを保管することもできます。
「私たちは、まずお酒が好きなんです。ですから、セラーを売りたいというより、よりお酒をおいしく楽しんでほしいという気持ちが強いんですよね。だからここまでこだわれたのかもしれません」(穂積さん)
さらに、穂積さんは「氷温M2」の楽しみ方について話を続けます。
「日本酒とワイン、どちらの品質にもこだわりたいという方に、胸を張っておすすめできるセラーができました。温度管理に優れているのはもちろんですが、真空断熱ガラスのおかげで、見た目もさらに美しくなっています。日本酒もワインも、今はさまざまなデザインのラベルがあるので、ボトルを眺めているだけでも楽しいですよね。お酒を買ってから、飲むまでの間も楽しんでいただけたらうれしいです」
「温度による味わいの変化を楽しんでほしい」と話すのは奥村さん。
「日本酒の味わいは繊細ですが、『氷温M2』なら、飲食店並みに管理が行き届いた1杯を家で楽しむことができます。また、上限は22℃まで設定できるので、今回は-2℃で、次は5℃で......など、同じお酒をさまざまな温度で味わってみてほしいですね。きっと、新しい発見があるはずです」
「氷温M2」を購入した方の多くは日本酒・ワインの上級者と思いきや、ライト層の方々からの注文も多いのだそう。穂積さんが「一般家庭でもセラーが浸透してきている実感がある」と話す通り、リモートワークなどの普及により家で過ごす時間が増えてきた今、セラーは家飲みの楽しみ方を広げてくれるアイテムのひとつといえるでしょう。
ワインと日本酒を同時に保管したい方にも、日本酒だけをたくさん保管したい方にもぴったりな「氷温M2」。家庭用の冷蔵庫では味わえない「氷温」の世界を、ぜひ体験してみてください。
(取材・文:藪内久美子/編集:SAKETIMES)
◎商品概要
- 商品名:「氷温M2」(LX63DM2Z)
- カラー:ブラック/ホワイト
- 価格: 189,000円(税込)
- 収納本数:
・ワインのみ:63本
・一升瓶のみ:27本相当 - 温度管理の種類:2温度
- 設定温度:
・上:-2〜22℃
・下:0〜22℃
- 商品名:「氷温M2」(LX95DM2Z)
- カラー:ブラック/ホワイト
- 価格: 289,000円(税込)
- 収納本数:
・ワインのみ:95本
・一升瓶のみ:36本相当 - 温度管理の種類:2温度
- 設定温度:
・上:-2〜22℃
・下:0〜22℃
sponsored by さくら製作所株式会社