名古屋駅のひとつ隣、伏見駅。このエリアに、さまざまなメディアや多くの文筆家に取り上げられる名店があるのをご存知でしょうか。オープンする16:00前から、店の外にはお客さんが行列をつくり、開店してわずか5分ほどで満席になるほど大人気の店「大甚 本店」です。

名古屋の飲食店「大甚」を経営するご夫婦

「大甚 本店」を営む、山田弘さん(右)と良子さん(左)

今回は、名古屋の伏見で創業以来111年間、変わらぬスタイルを貫いてきた老舗居酒屋を体験します。

暖簾をくぐった先の情緒的な空間

名古屋駅から「伏見駅」までは、地下鉄で5分。7番出口から地上へ出れば、徒歩1分もかかることなく「大甚 本店」の暖簾をくぐることができます。近くには、歌舞伎の上演などが行なわれる「御園座(みそのざ)」があるなど、歴史や情緒を感じさせるエリアです。

また、繁華街として有名な「栄」にも近く、旅行や出張で立ち寄るのにぴったりの立地です。

竈突(くど)の写真

暖簾をくぐると、そこに広がるのは文化財のような空間。主人の山田弘さんが元気な声で迎えてくれます。

入り口のそばにある"かまど"。ここが、この店の名物である燗酒をつける場所になっています。特別な酒燗器は使わず、釜で湯を湧かして、そこに徳利を入れていくという伝統的なやり方です。「大甚 本店」に来たら、燗酒を飲まずには帰れません。

取り扱う日本酒は、広島県・賀茂鶴酒造に特注した樽酒と、灘の銘酒「菊正宗」のみです。

名古屋「大甚」のおかみさんが燗をつけている写真

鍋にせいろのような木枠をはめて燗を付けるこのスタイルは、独自に考案したものだそう。

名古屋「大甚」のお燗用のせいろ写真

燗番を務めるのは、主人の奥様・山田良子さん。絶妙なぬる燗の虜になる人が後を絶ちません。

手づくりの惣菜は、1皿300円から!

16:00のオープンに合わせて、8時30分には仕込みを始めるという手づくりの惣菜は、一皿300〜400円という驚きの価格です。惣菜は小鉢に小分けされ、客席近くのテーブルに並んでいます。自分の好きなものを選び、席に持っていくスタイルです。惣菜の他に、時価で提供する料理として、刺身や焼魚、煮魚などを注文することもできます。

名古屋の飲食店「大甚」のお惣菜の写真

四季折々の惣菜がずらりと並べられているのを見ると、ついつい取りすぎてしまいますね。今回うかがったときには、あゆの佃煮が用意されていました。小ぶりながらも肉厚で、あっさりとした甘さが絶品です。

名古屋「大甚」のアユの佃煮

手づくりの惣菜をアテに、店の名前が入った3合徳利を傾けて、手酌で一献。

名古屋「大甚」のお料理と燗酒の写真

樽酒らしい、爽やかなヒノキの香りが通り抜けた後にやって来る、ぬる燗ならではの丸みを帯びた辛さ。うたた寝をしているような心地良さです。ちなみに、樽の香りが苦手なお客さんのために、通常のお酒も常備しているのだとか。

美味いお酒の秘密は、店の雰囲気づくり

気の置けない友人と語り合いながら飲むお酒の旨さは、格別ですよね。

「大甚 本店」は、ひとりでふらりと入ってもそんなお酒を味わうことができます。その理由は、美味しく楽しくお酒を飲める雰囲気づくり。ひとりで静かにお酒を飲むお客さんへの配慮として、あまりにも騒がしい方々には、退店をお願いする場合もあるのだそう。

名古屋の飲食店「大甚」のお客さん二人

写真のおふたりは、なんとこの日が初対面。酒と肴を存分に楽しむことができる空間づくりも、人気の秘密なのでしょう。

初めて来たのに、初めて来た気がしない。また、行きたくなる。「大甚 本店」はそんな名店です。

◎ 店舗情報

  • 店名:「大甚 本店」
  • 住所:〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄1-5-6 1F
  • Tel:052-231-1909
  • 営業時間:[月〜金] 16:00〜21:00、[土] 16:00〜20:00
  • 定休日:日曜、祝日

(文/黒石英真)

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