世界最大規模のワイン品評会「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)」。毎年ロンドンで行われる"世界でもっとも大きな影響力をもつ"と言われるワインコンテストです。
2019年、その「SAKE部門」において、もっとも名誉ある「チャンピオン・サケ」の称号を仙台伊澤家 勝山酒造の「勝山 純米吟醸 献」が獲得しました。そして、菊正宗酒造(兵庫県)の「菊正宗 しぼりたてギンパック」が「グレートバリュー・チャンピオンサケ」を受賞し、平和酒造(和歌山県)が「サケ・ブリュワリー・オブ・ザ・イヤー」に選出されました。
以前の記事で、勝山酒造の酒造りに焦点を当てましたが、今回は10月19日に開催される「IWC2019受賞プレミアム日本酒試飲会」を目前に、本コンテストのコ・チェアマンである大橋健一さん、そして名誉ある各賞を獲得した菊正宗酒造と平和酒造の方々に話を伺いました。
海外進出の鍵を握る「IWC」
IWCにSAKE部門が誕生したのは2007年。以来、SAKE部門の受賞酒は、"外国人の口にも合う日本酒"として国内外で注目され、IWCは日本酒の海外進出における重要なイベントとして、その価値を高めています。
2019年のSAKE部門は「普通酒」「純米酒」「純米吟醸酒」「純米大吟醸酒」「本醸造酒」「吟醸酒」「大吟醸酒」「スパークリング」「古酒」の9カテゴリーに分けられ、それぞれの部でブラインドテイスティングによる審査が行われました。
審査結果に応じて与えられる評価は「ゴールドメダル」「シルバーメダル」「ブロンズメダル」「大会推奨酒」の4つ。さらに、ゴールドメダルを獲得した出品酒のなかで特に優れたものに対して「トロフィー」の栄誉が与えられ、そのうちひとつの銘柄に、SAKE部門の最高賞として「チャンピオン・サケ」の称号が授けられます。
また、ゴールド・シルバーメダル受賞酒のなかで、日本での小売価格が720mlで1,000円以下、かつ生産量が四合瓶換算で10万本以上という優れたコストパフォーマンスを発揮した酒に与えられるのが「グレートバリュー」。こちらも、さらにそのなかからひとつの銘柄が「グレートバリュー・チャンピオンサケ」に選出されます。
さらに、SAKE部門の中で、エントリーした複数の日本酒すべてで高評価を得た酒蔵には「サケ・ブリュワリー・オブ・ザ・イヤー」が与えられます。
ワイン業界のもっとも名誉ある称号「マスター・オブ・ワイン」のひとりであり、IWCのコ・チェアマンを務める大橋健一さんは、IWCについて次のように話します。
「IWCは受賞酒のプロモーションに積極的に貢献する、世界でも類を見ない審査会です。ゆえに、その審査には、
また、日本酒の海外進出を目指す酒蔵の方々に対して、「日本酒が進出していく市場をまずはじっくりと俯瞰することを
日本酒がグローバルに展開していくにあたって、現地の趣味嗜好に迎合しすぎることなく、各蔵の個性を突き詰めていくことが重要になるようです。
イメージを覆すパック酒、世界の泡を超えるスパークリング
さて、そんなIWCで高い評価を受けた菊正宗酒造と平和酒造は、今回の受賞に対して、どのような思いをもっているのでしょうか。
まずは、「グレートバリュー・チャンピオンサケ」に輝いた「菊正宗 しぼりたて ギンパック」を醸す菊正宗酒造。今年で創業360年の歴史があり、生酛造りの伝統を守りながらも、近年は既存イメージにとらわれない新機軸を打ち出し続けています。
そのひとつが、「菊正宗 しぼりたて ギンパック」です。「食卓をもっと上質に」というコンセプトのもと、独自に開発した新酵母を使用することで、豊かな吟醸香を普通酒に残すことに成功しました。手を伸ばしやすい価格でありながら、高級感あふれる風味を誇ります。
菊正宗酒造のマーケティング課課長で広報宣伝担当の宮内大輔さんは「原材料や造りにこだわった高価な商品も重要ですが、日本酒の需要拡大には日常酒として世界に認知してもらえるようなきっかけが必要です。そのために、世界最大級のワインコンテストであるIWCにチャレンジしました」と語ったうえで「世界的な栄えある賞に歓喜しています。素直に味わいが評価されたことをうれしく思います」と感想を述べました。
また、「菊正宗 しぼりたて ギンパック」について「紙パックに対する偏見を取り払える存在になると信じています。入門酒としても最適ですが、やはり日常酒として、お客様の食卓で愛され続けてほしいですね」と語りました。
続いて、「サケ・ブリュワリー・オブ・ザ・イヤー」に輝いた平和酒造。「紀州の風土」を伝えたいという思い、そして、自分たちの「子ども」のように育てていきたい思いから名付けられた銘柄「紀土(KID)」を醸しています。
また、自社ブランドの梅酒造り、クラフトビールの醸造、新卒採用への注力など、革新的な取り組みを行う蔵としても注目されています。
スパークリング部門のトロフィーを受賞した「紀土 純米大吟醸 Sparkling」は、「純米大吟醸の技法で世界の泡を超えよう」との思いから生まれた乾杯酒。瓶内二次発酵による自然な泡の優しい口当たりと、厳選された山田錦の柔らかな甘みが表現されています。繊細な味わいとガス感のバランスを生み出すため、特に瓶内二次発酵のコントロールにこだわったそう。
「IWCという大きな舞台に挑戦してから10年弱。これまでの評価とあわせて、『紀土』の可能性を知るために出品し続けてきました。今回の受賞は、高品質で丁寧なものづくりの追求、そして、醸造家ひとりひとりが日本酒を取り巻く文化を発信していく姿勢を評価していただけた結果だと感じています。
この発信力の高さを生かして、日本酒の可能性や新たな魅力を提案し、日本酒への注目をさらに高めていきたいです。また、これまでの酒蔵の働き方にとらわれず、スタッフが自分らしく活躍できるような新しいロールモデルを目指しています」(平和酒造 代表取締役社長 山本典正さん)
魅力たっぷりの試飲会が開催!
今回紹介した菊正宗酒造と平和酒造の日本酒はもちろん、各部門のトロフィー受賞酒が一堂に会する「第9回 IWC2019受賞プレミアム日本酒試飲会」が、YUITO日本橋室町野村ビルにて10月19日(土)に開催されます。
飲み手にとっては上位入賞酒の23銘柄をすべて試飲することができ、造り手にとってはお客さんと直接話すことができる貴重な機会。期待の声が寄せられています。
「ひとりでも多くの方々にギンパックを体験していただき、気に入っていただいた方々に、近くのお店で購入していただけたらうれしいです。そして、全国各地のさまざまな酒蔵がさまざまなお酒にチャレンジしていることも知っていただきたいですね」(菊正宗酒造 宮内大輔さん)
「『紀土』が生まれてから10年以上が経ちますが、『サケ・ブリュワリー・オブ・ザ・イヤー』を受賞するまでに成長できたのは、これまで支えていただいたみなさんのおかげだと思っています。今回のイベントでは、その感謝の気持ちをお伝えできることがとても嬉しいです」(平和酒造 山本典正さん)
「毎年開催されるこのイベントは、
右へならえ!的な消費傾向が見られなくもない日本市場の中で、愛好家の方々が自らの嗜好を主張できる大切さを改めて知ることのできる素晴らしいチャンスだと思います。少なくともこの場で供される日本酒はすべてがゴールドメダルの受賞酒。ゆえに、品質は素晴らしいものばかりですから」(大橋健一さん)
世界から高い評価を受け幅広いラインナップの日本酒や、造り手の方々との出会いなど、さまざまな魅力が詰まっている「第9回 IWC2019受賞プレミアム日本酒試飲会」。当日券も用意されているため、ふらっと立ち寄ることもできます。ぜひ、足を運んでみてください。
◎イベント概要
- イベント名:「第9回 IWC2019受賞プレミアム日本酒試飲会」
- 開催日:2019年10月19日(土)
- 時間:
【日本酒セミナー+第1部】12:45〜13:45/14:00~15:30 (定員に達したため販売終了)
【第1部】14:00~15:30
【第2部】16:30~18:00
※各部入れ替えの定員制
※受付は30分前から開始 - 料金:
【第1部】3,500円(税込)
【第2部】3,500円(税込) - 会場:YUITO日本橋室町野村ビル(会場6F/受付5F)
- アクセス:東京都中央区日本橋室町2-4-3/「三越前」駅(A9出口直結)徒歩1分
- お申し込み:Peatix/チケットぴあ/イープラスより
- 主 催:野村不動産株式会社
- 協 力:株式会社千疋屋総本店
(文/SAKETIMES編集部)