新潟県の菊水酒造の看板商品といえば、金色のアルミ缶に入った「菊水ふなぐち」を思い浮かべるかもしれません。

しかし、そんな「菊水ふなぐち」と並んで、同社の代表商品として愛されてきたのが、社名の「菊水」を冠する「菊水の辛口」「菊水の純米酒」「菊水の四段仕込」の3種類です。

2023年10月、菊水酒造はこれらの商品をリニューアルしました。

いずれも中身の味は変わりませんが、「菊水の辛口」と「菊水の純米酒」は、商品名はそのままに、ラベルに「蔵人推奨」の文字が記されました。全国の日本酒ファンだけでなく、製造に関わっている蔵人からも愛されていることを示しています。

また、「菊水の四段仕込」は、独特の味わいをイメージしやすいようにと「菊水の淡麗甘口」に商品名を変更しました。こちらのラベルには、製法の特徴として「四段仕込」の文字が記載されました。もちろん、この「菊水の淡麗甘口」も、菊水酒造の蔵人が自信を持っておすすめする「蔵人推奨」の一本です。

画像提供:菊水酒造

今回は、この「蔵人推奨」に注目。「菊水の辛口」「菊水の純米酒」「菊水の淡麗甘口」は、菊水酒造の蔵人にとってどんな存在なのでしょうか。各商品に対する蔵人の思いや、SAKETIMES編集部の飲み比べを通して、その魅力を探りました。

“いつもの酒”に抱く、菊水酒造の蔵人の思い

蔵人からもっとも支持されている一本「菊水の辛口」

「菊水の辛口」の発売は1978年。それから約40年以上、変わらない美味しさを守り続けてきました。

発売当時、日本酒の世界では「甘いお酒こそが良いお酒だ」と、甘口の酒質が全盛でした。そんな時代に誕生した「菊水の辛口」。菊水酒造はすぐに受け入れてもらえないことは承知の上で、それでも人々の好みが変化し多様化していくことを確信して、この商品を生み出しました。

実際、1980年代の中頃からは、食事とともに味わう辛口の日本酒が人気となりました。「菊水の辛口」は、そんな先見の明から生まれたのです。

菊水酒造の蔵人のコメント

「菊水の辛口」は、菊水酒造の蔵人の間でもっとも人気の一本。食事との相性が良いという点が、晩酌酒としての安心感につながっているのかもしれません。

  • 刺身や寿司に合うので、自分で釣った魚といっしょに飲むこともあります。
  • 夏はロックですっきりと、冬は常温でも燗でも美味しいので、一年を通して楽しめます。
  • 常温か燗がおすすめ。刺身やのどぐろ焼と合わせたくなりますよ。
  • 新潟県らしい淡麗辛口だと思います。カツオのたたきと合わせることが多いです。
  • しっかりとした旨味がありますが、後味はスッキリ。私は冷やしたほうが飲みやすいです。
  • どんな料理やおつまみにも合い、冷やしても常温でも燗にしても美味しい万能酒だと思います。
  • どんな料理にも合うので、家に常備しておきたい一本。
  • オンザロックでも美味しいですが、炭酸で割ってレモン果汁を入れるのもおすすめ。
  • 私にとっての終着点。落ち着かせてくれる一本です。
  • 生活していくためのパートナーで、安心して飲めるいつものお酒ですね。

また、変わらない味を守り続ける難しさもあるようです。

  • 「菊水の辛口」の酒造りに関わった時に、原料の選定や醪の管理など、美味しさを守るために蔵人がプライドを注いでいる商品だと感じました。
  • 「菊水の辛口」という商品名ですが、しっかりとした旨味があって飲み飽きしない美味しさがあります。私は分析を担当していますが、いつもの味になるように、日々の業務に取り組んでいます。
  • 「菊水の辛口」の醪(もろみ)を担当していた時、キレの良い辛口の味わいを醸すことの難しさを感じました。お客様が楽しく飲んでいるシーンを思い浮かべながら、生産しています。

画像提供:菊水酒造

編集部のコメント

香りは穏やかで、すっきりとしたアルコール感があります。飲んでみると、まずはしっかりとした旨味を感じますが、後味のキレが良く、余韻はドライな印象。冷やして飲むと後味のキレが、燗にして飲むとふくよかな旨味が強調されますが、常温で飲んだ時のバランスが抜群で、日々の晩酌の一本にぴったりだと感じました。

米の豊かな旨味を味わう一本「菊水の純米酒」

菊水酒造が酒蔵を構える新潟県の名産といえば「米」。「菊水の純米酒」は、そんな自然の恵みをそのまま味わえるように、新潟県産米のみを使用した純米酒です。米は磨きすぎずに、あえての精米歩合70%。米由来のふくよかな旨味を楽しめます。

菊水酒造の蔵人のコメント

蔵人からは、米の旨味がよりはっきりと感じられる常温や燗がおすすめという声が寄せられました。

  • 菊水酒造の日本酒の中でも、骨太マッチョな一本。
  • 冷やしても温めても美味しいオールラウンダーなので、自分好みの温度を見つけて楽しめますよ。
  • まろやかで味わい深い。燗にしても美味しいが、私は常温が好きです。
  • 燗にして、おでんといっしょに飲みたい。冬場に飲みたくなる一本です。
  • 暑い時はオンザロックで、いつもは常温で。奥深い味わいが特徴です。何気ない日常のご褒美として飲んでいます。
  • 料理の味を邪魔しない適度な酸味が絶妙。
  • 特に秋の生活のパートナー。紅葉を見ながら楽しみたいです。

また、造り手としての視点では、原料が米・米麹・水のみという純米酒ならではの難しさもあるようです。

  • アルコール添加でカバーできないため、バランスが求められます。
  • 米と水だけの商品なので、造り手としてはとても緊張する商品です。

画像提供:菊水酒造

編集部のコメント

炊き上がった白米を思わせる、ふっくらとした旨味を感じる香りです。飲んでみると、やさしい甘みを感じた後、心地良い旨味がやってきます。ボリュームのある味わいですが、後口のキレが良く、すっきりと楽しむことができます。冷やしても美味しいですが、大きな魅力である旨味をしっかりと感じるという点では、常温か燗がおすすめです。

甘みとキレが両立した絶妙なバランスの一本「菊水の淡麗甘口」

前述したように、1980年代の中頃からは「食事と合わせるなら辛口」というイメージが普及し、主に新潟県の酒蔵が造る「淡麗辛口」の日本酒がブームとなりました。そんな中、新しい提案として発売したのが「菊水の淡麗甘口」(旧:菊水の四段仕込)です。

通常、日本酒の醪(もろみ)造りは、米・米麹・水を3回に分けて仕込みタンクに投入しますが、さらに4回目にうるち米を投入することで、やさしい甘みを加えています。さらりとした甘みとキレで、食事にも合わせやすい一本です。

菊水酒造の蔵人のコメント

「菊水の辛口」「菊水の純米酒」とは大きく異なる味わいのため、いつもと違ったシーンやペアリングで楽しんでいる蔵人が多いようです。

  • すっきりとした甘みが特徴なので、食前の一杯に。喉をすっと潤してくれます。キンキンに冷やしても甘みを楽しめます。
  • 冷やすとスッキリとした甘みが、常温だとふくらみのある甘みがあります。気分転換をしたい時に飲んでいます。
  • 就寝する前に、バニラアイスにかけて楽しむのがおすすめです。
  • チョコレートなどのお菓子にも合いそう。
  • あとに残らない上品な甘み。さらりとして口当たりがやさしい。
  • おでんや鍋料理との相性が良く、冬によく飲んでいます。ぬる燗が抜群に美味しい。

また、菊水酒造のラインナップでは珍しい甘口タイプということで、日本酒を飲み慣れていない人にも試してみてほしいという声もありました。

  • 日本酒ファンは辛口好きが多いが、そんな方々にも手に取ってもらえる、甘口の裾野を広げる可能性を持った存在。
  • 菊水酒造の隠れた銘酒だと思う。これからの若い世代に勧めたい一本。
  • 娘が20歳になったら最初の日本酒はこれと決めています。すっきりとした甘みが、日本酒の入門としてぴったりだと思います。

画像提供:菊水酒造

編集部のコメント

香りは、ふっくらとした旨味の印象が強いですが、やさしい甘みもはっきりと感じられます。飲んでみると、まずはしっかりとした甘み、そしてその中にほっこりとした旨味があります。心地良い甘みが最後まで続きますが、後口のキレが良いく、ベタつきません。冷やしてさっぱりと楽しむか、温めてじんわりと楽しむか、気分に合わせた変化を楽しめる一本だと思いました。

いつもの「菊水」の味を、これからも守り続ける

変わらない美味しさを守り続けるのは容易なことではありません。菊水酒造の定番商品が、人々の嗜好や社会の潮流が移り変わる中で、何十年にもわたって愛され続けてきたのは、常に時代の先を読み、お客さんにとってのより良い体験を思考し続けてきたからこそ。

今回のリニューアルをきっかけに、菊水酒造の蔵人が愛する“いつもの酒”を、ぜひ飲んでみてください。

(取材・文:藪内久美子/編集:SAKETIMES)

Sponsored by 菊水酒造株式会社

編集部のおすすめ記事