今年4月に行われた横浜髙島屋の「第3回 こだわり千花繚乱 日本酒まつり」。このイベントでは、フロアに並ぶ各酒蔵のブースで試飲を行いながら、お気に入りの日本酒を購入することができます。

髙島屋日本酒まつりの様子

今回は各酒蔵ブースの様子やトークセッションなど、大盛況で幕を閉じたイベントの様子をお届けします。

全国から集まった50の酒蔵と約900種類の日本酒

水芭蕉を醸す、永井酒造営業さんの写真

期間中、50蔵の日本酒ブースには、蔵元や蔵人の姿が見られました。来場者の方々は、試飲をしながら自分好みのお酒を見つけたり、熱心に質問したりしていました。

竹林の蔵人さん

橘ケンチさんがプロデューサーを務める「未来の日本酒プロジェクト」から支援を受ける丸本酒造(岡山県)には、特に多くのお客さんが興味を示していました。

「竹林」は、蔵人みずからが栽培した山田錦を全量使用している丸本酒造の代表銘柄。この会場では、これまでのラインナップになかった「あらばしり 無濾過生原酒」が限定発売されました。

みむろ杉の蔵人さん

人気酒販店「横浜君嶋屋」の代表・君嶋哲至さんがプロデュースするバーでは、日本酒ファンにはたまらない銘柄が並び、蔵元が日替わりでカウンターに入っていました。

取材時に立っていらっしゃったのは、今西酒造(奈良県)の蔵元・今西将之さん。蔵元に直接サーブしていただき、ていねいな説明を受けながらお酒を飲めるという、貴重な体験ができるのも本イベントの魅力です。

木村硝子の酒器

他にも、グラスによる香味の変化を体験できる木本硝子の飲み比べセットを提供するブースや、各地の珍味を扱ったブースなどがありました。日本酒の試飲や購入だけでなく、日本酒にまつわる多くのコンテンツが提供されているのが「日本酒まつり」の魅力と言えるでしょう。

日本酒の魅力について熱く語る!

左から、久須美酒造・久須美賢和さん、EXILE・橘ケンチさん、赤星とくまがい・赤星慶太さん

左から、久須美酒造・久須美賢和さん、EXILE・橘ケンチさん、赤星とくまがい・赤星慶太さん

イベント期間中、"日本酒の魅力とは?"をテーマに、トークセッションが開催されました。

登壇したのは、EXILE/EXILE THE SECONDのパフォーマーで、酒サムライとしても活躍する橘ケンチさん、漫画『夏子の酒』のモデルとなった久須美酒造(新潟県)の七代目久須美賢和さん、日本酒に傾倒していったきっかけとなったのは『夏子の酒』だったという日本酒Bar「赤星とくまがい」店主・赤星慶太さんの3人です。

赤星さんが店主を務める「赤星とくまがい」は、予約が取れないほど人気の日本酒専門ペアリングBAR。橘さんも、日本酒の美味しさや料理との相性に目覚めたのは「赤星とくまがい」だったのだとか。

アメリカで18年間もBARを経営していた赤星さん。お客さんと日々コミュニケーションをとるなかで、初めて日本酒を飲んだ時に「美味しくない」と思ったら、そこからずっと飲まなくなってしまうものだと感じたそうです。

どうすれば美味しく飲んでもらえるかを考えた結果、料理とのペアリングに行き着きました。赤星さんは「ペアリングのプロとして、誰にも負けたくないという強い気持ちをもっている」と話していました。

高島屋

日本酒の魅力を語るなかで、久須美さんは日本酒の大きな特徴として以下の3点を挙げました。

第一に、歴史が長いということ。米を原料とする日本酒は、縄文後期に稲作が入ってきてから食料を確保するうえでも、天災や飢饉、戦争など様々な試練を乗り越えてきた日本人の知恵が凝縮している。第二に、エコな食品であること。原料が米で、精米した後の米粉は煎餅などの材料になる。また酒を絞ったあとの酒粕は栄養に優れた伝統食品であり、容器の一升瓶はリサイクルの優等生。捨てるところがない。第三に、生活に密着していること。冠婚葬祭には日本酒が必要不可欠。日本酒は人との関係性を築く大切な役目を担っていると話します。

「"日本"を感じられるのが日本酒。日本中にある蔵がそれぞれの哲学を打ち出しています。酒蔵は地域に根付き、日本酒を軸にコネクトしている気がしますね」と語るのは橘ケンチさん。橘さんは日本酒を通じて、醸造や販売に関わる人の夢を知り、それぞれの夢を追いかける姿に感銘を受けたそうです。

高島屋

今後の日本酒業界に対して、3名はどんな取り組みをしていくのでしょうか。

橘さんは新政酒造で「亜麻猫橘」を仕込んだ経験をふまえ、次のように抱負を語ってくれました。

「日本酒を造る作業は本当に大変。それなのに、ユーザーに届く時にはワインなどに比べるとこんなに安いんだと感じました。名前に国名が付いているのは、世界でも日本酒しかありません。大人になってくると、より日本を、自国のことを知りたいという想いが生まれます。日本酒の魅力を広めるためにも、日本酒に直に触れることのできる機会をもっと企画していきたいですね」

赤星さんは「日本酒で縁をいただきました。その縁と繋がっている時間を大切に生きたいです」と、熱い思いを噛み締めます。

「日本酒は日本文化そのもの」と話すのは久須美さん。「みなさんもご存知の通り日本は災害の多い国です。酒蔵が田んぼを枯らさないようにすることで国土保全と国民の食料確保にも繋がります。今後も誠実に醸し、日本酒を米と水との芸術の域へと高め、その奥深さを世界に伝えていきたい」と語ります。

高島屋
最後に、橘さんに日本酒の飲み方について伺うと「気の合う仲間や美味しいご飯が一緒にあるといいですね。自分で"楽しめる環境を作る"のが大事だと思います」と話してくれました。

3名の日本酒に対する想いと、日本酒の魅力を知ることができるトークイベントでした。

出張版「赤星とくまがい」でペアリング体験

高島屋

「赤星とくまがい」と久須美酒造がコラボレーションしたイートインカウンターも、イベントの目玉のひとつ。赤星さんみずからがカウンターに立ち、来場者とコミュニケーションをとっています。

高島屋

「桜マスと新玉ねぎのマリネ グレープフルーツのソース」と「清泉 大吟醸」のペアリングは、橘さん曰く、「赤星とくまがいの王道のイメージのペアリング」で、ファーストインパクトが鮮烈で舌を活性化させてくれるのだそう。これまでお店に伺う機会がなかったお客さんも日本酒のペアリングを体験し、とても喜んでいました。

盛りだくさんの6日間の会期を終えた横浜髙島屋の「日本酒まつり」。日本酒に関するうれしい発見が数多くあり、すでに次回の開催が待ち遠しくなってしまうほど。第3回を迎えた今回も、たくさんの方々に日本酒の魅力が発信され、日本酒愛好者から初心者まで楽しめるイベントとなったのではないでしょうか。

(文/まゆみ)

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