近年、しゅわしゅわとした発泡感が心地良いスパークリング日本酒が増えています。低アルコールの商品も多く飲み口が軽やかなため、乾杯酒としても人気です。
そんなスパークリング日本酒は泡を出す方法によって、出来上がったお酒に炭酸ガスを注入するタイプと、瓶の中で発酵が続いて炭酸ガスが発生するタイプに分けられます。
後者の瓶内で発酵を続ける「瓶内二次発酵」や「活性にごり」と呼ばれるお酒は、開栓の際に勢いよく噴き出してしまうことがあり、時には半分近くが飲めなくなってしまうことも。
そんな失敗をしないために、今回はスパークリング日本酒の安全な開け方を紹介します。
しっかり冷やして落ち着かせること!
開栓前の準備では、「しっかり冷やすこと」と「刺激を与えずに落ち着かせること」が重要です。
炭酸ガスは、酵母が糖をアルコールと二酸化炭素に分解するアルコール発酵の際に生成されます。一般的な日本酒は品質の安定を図るため、低温殺菌である「火入れ」や、フィルターや活性炭素を使った「濾過」などを行って瓶内での発酵を抑えています。
しかし、活性にごりの場合は、溶け残った米・酵母などの「滓/澱(おり)」が瓶内に混ざっています。日本酒の醸造には、液体と個体(溶け残った米・酵母、酒粕など)をわける「上槽」という工程がありますが、滓をあえて多く残しているのがにごり酒です。
活性にごりを開栓する時には、瓶内で発酵を続ける酵母の活性を弱めてガスの発生を抑制するために、よく冷やして落ち着かせる必要があるのです。
ちなみに、沈殿した滓は、開栓の衝撃で勝手に混ざります。もし混ざらなくても開栓してガスを逃してからでも遅くはないので、開栓するまではそっとしておきましょう。
おすすめの冷やし方は、冷蔵庫のドアポケット以外での縦置きです。ドアポケットは開閉の度に、横置きは持ち上げる際に振動が発生します。酒瓶には高さもあるため、縦置きが難しいかもしれませんが、なるべく動きの少ない場所を選んでください。日本酒セラーに入れるのがベストです。
また、家庭用の冷蔵庫は一般的に野菜室が約6℃、冷蔵室が3〜5℃なので、より冷える冷蔵室が適切でしょう。
キャップタイプによって変わる開栓のすすめ
スクリューキャップ
スクリューキャップ(回して開けるタイプのキャップ)の場合は、キャップを少しずつ開けて様子をみてください。お酒の液面からシュワシュワと泡が発生して液面が上がってきたら、キャップをすぐに閉めます。完全にキャップを閉めると、上昇した液面がゆっくりと下がっていきます。
この開封を繰り返して液面の上昇が落ち着いたら成功です。開栓する時に瓶を斜めにするとガスが逃げる液面の範囲が広がるため、落ち着くのが早くなります。ただし、商品によっては30分以上かかることもあるため、乾杯の時間に合わせる際には、余裕を持ってあらかじめ開けておくのがおすすめです。
写真のように、蓋の中央部にガスを逃がす穴が空いているキャップも増えてきています。しかし、状態によっては噴き出すこともあるため、慎重に開けましょう。
キャップタイプ
キャップタイプは、スクリュータイプと違って少しずつ開閉することができないため、がびょうやアイスピックで小さな穴を開けて徐々にガスを抜いていきます。
注意点は、蓋に被せてあるアルミのカバーごと穴を開けること。カバーをとってしまうと、蓋と中身が一気に飛び出す場合があります。
また、穴を開けてしまうと保存時の横置きができなくなるため、別のキャップを用意しておくか、後述するボウルを使った方法と使い分けてみてください。
その他、日本酒学講師の資格をもつ「海鮮居酒屋MARU(東京都墨田区)」の丸満さんのおすすめは、ワインオープナーを使った開栓方法。
原理はがびょうを使った開け方と同じで、栓に穴を開けてガスを逃がすのですが、ワインオープナーは先端から根本にかけて徐々に太くなるため、穴の大きさの調整が簡単にできます。
また、螺旋構造のため手を離すことができるので、他の作業と並行して開栓したい方や慣れていない方に向いています。
ボウルを使って万全の体制を整える
実際に開栓してみると、「キャップを回しすぎた」「穴が大きすぎた」などのアクシデントはつきもの。そこで、万が一に備えての対策もしておきましょう。
まずは、風呂場や洗面所など、濡れてもOKな場所で開栓すること。電子機器や紙の書類などを周辺に置かない配慮も大事です。
そして、大きいボウルとさらに一回り小さいボウルを用意しておきましょう。万が一噴き出してしまった場合でも、小さいボウルを酒瓶の上にかぶせることで、お酒をこぼさずに回収することができます。
せっかくの発泡感が弱くなってしまう可能性もありますが、どうしても急いで開けたい時にも使える方法です。
2016年にはスパークリング日本酒を世界に広めるための「awa酒協会」が発足し、2019年にはフランスの日本酒コンクール「Kura Master」にスパークリング部門が新設されるなど、スパークリング日本酒の市場はにぎわいをみせています。
各銘柄ごとに個性的な味わいがあるので、いろいろなスパークリング日本酒を楽しんでみてください。
(文/SAKETIMES編集部)