「滝畑ダム地酒熟成プロジェクト」は大阪府と河内長野市、そして、かつて豊臣秀吉が飲んでいたといわれる「天野酒」で有名な西條合資会社が一体となって、熟成酒を造ろうという試みです。

ダムの底は天然の貯蔵庫

熟成の実験に使われたのは、大阪市河内長野市にある滝畑ダム。ダムの底や施設の一部である工事用小型トンネルに約半年間、日本酒を貯蔵させて、どのように熟成するかが検証されました。貯蔵されたのは、西條合資会社が造った「天野酒」の純米酒と本醸造原酒です。

滝畑ダムの底は、冬から春にかけて水温が7℃で保たれ、水の流れが穏やかという特徴があります。また、トンネル内部は高さ約2.5メートル・長さ約90メートルの大きさで、冬から春にかけて気温が12℃前後で推移する、安定した環境です。

2017年12月22日、実際にお酒を沈めたときの様子を紹介いたします。

(提供:西條合資会社)

半年間熟成の天野酒をテイスティング

検証報告会にて、今回の熟成酒をテイスティングしました。熟成期間は半年間と短いですが、湖底で熟成された酒の旨味が、通常商品よりもやや高く感じられました。旨味については、微妙に違いが出る程度。熟成期間をさらに長くとれば、結果が変わる可能性もあるでしょう。

「天野酒 本醸造原酒」のテイスティング結果 (10段階評価)

滝畑ダム地酒熟成プロジェクトの評価「天野酒本醸造原酒」

「天野酒 純米酒」のテイスティング結果 (10段階評価)

滝畑ダム地酒熟成プロジェクトの評価「天野酒純米酒」

味覚センサー(味覚認識装置 TS-5000Z)を使った数値分析では、トンネル熟成酒・湖底熟成酒ともに、甘味・旨味が若干増しているという結果が出ました。

地域資源を活かした日本酒のストーリー

西條合資会社の蔵元・西條さんに、このプロジェクトの意義について聞いてみると、「滝畑ダムのような地域資源を活用した日本酒のストーリーづくりにはとても意味がある。もっと活用すべき」と話してくれました。

滝畑ダムでじっくりと熟成されたこのプレミアムな「天野酒」は、地元の小売店を通してのみ販売される予定です。河内長野市のふるさと納税の返礼品にラインアップされているので、ぜひ、次回の募集でチェックしてみてください。

(文/石黒建大)

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