2019年も残りわずか。今年は年号が「平成」から「令和」へ変わるなど、大きなニュースがたくさんありました。今回は、日本酒業界の2019年を月ごとに振り返っていきましょう。
1月
「南部美人」がヴィーガン認証を取得
日本酒の評価が海外で高まっているなか、岩手県の南部美人が「ヴィーガン(完全菜食主義者)」の方々が安心して飲める食品としての認証を受けました。海外の方々が日本酒を選ぶ際の基準のひとつになっていきそうです。
2月
日本酒の輸出金額と輸出量が過去最高を更新
前年(2018年)の日本酒輸出について、輸出量が前年比10%増、輸出金額が19%増だったことを日本酒造組合中央会が発表しました。2010年から9年連続で過去最高を更新し続けていますが、輸出金額が200億円を超えるのは初めてのことです。
3月
栃木県の酒造好適米「夢ささら」の新酒が発売
ユニクロと酒蔵がコラボし、酒蔵Tシャツを発売
「にいがた酒の陣」入場者数が最多記録を更新 (外部リンク)
2019年で15回目を迎えた大人気の日本酒イベント「にいがた酒の陣」。新潟県内の83酒蔵が出店し、入場者数は過去最高の14万1,611人となりました。2020年からは、通し券で試飲し放題だった従来のやり方を改めて、試飲回数券付きの入場券に変更するようです。
4月
映画『カンパイ!日本酒に恋した女たち』が公開
「エド・シーラン」とのコラボ日本酒が発売
「KISS」とのコラボ日本酒が発売
今年は、海外のミュージシャンなどの著名人とコラボした日本酒が多く発売されました。有名人には隠れた日本酒ファンがたくさんいそうです。
5月
楯の川酒造が精米歩合1%の高級日本酒「光明 山田錦」を発売
SAKE100が1本15万円の24年熟成酒「現外 -gengai-」を発売
平成30酒造年度 全国新酒鑑評会の審査結果が発表
兵庫県産の山田錦を精米歩合1%まで削った「光明 山田錦」は、なんと21万6,000円(税込)。その後、宮城県の新澤醸造店から精米歩合0%の商品がリリースされ、関係者の間で話題になりました。
今年の全国新酒鑑評会では、福島県が7年連続で金賞受賞数1位を獲得したことや、小江戸鏡山酒造が埼玉県の酒米「さけ武蔵」で初めての金賞に選ばれたことが大きなニュースになりました。
6月
南部美人が瞬間冷凍貯蔵の生酒「フローズンビューティー」を発表
「SAKE COMPETITION 2019」上位入賞酒が発表
加藤嘉八郎酒造が山形県沖地震の被害で約10,000本が破損
クールジャパン機構が中国ワイン卸会社へ22億円の出資
しぼりたての生原酒を冷凍貯蔵して流通させる技術や、海外マーケットに強い卸会社とのネットワーク強化など、日本酒の海外輸出を後押しするような動きが見られた月でした。
その一方で、大きな被害をもたらした山形県沖地震が発生しました。翌月には、山形県内の温泉宿54軒が、特に被害の大きかった大山地区の日本酒を積極的に提供し観光客の誘致に尽力、またその翌月には、なにが当たるかわからない"ラッキーボトル"日本酒を販売する「#もっけだの鶴岡」プロジェクトがスタートしました。
7月
「IWC 2019」SAKE部門のチャンピオン・サケが発表
「Kura Master 2019」のプレジデント賞が発表
帯広畜産大学キャンパスに日本酒蔵が誕生
台湾、日本酒などの関税引き下げ案を可決 (外部リンク)
世界でもっとも大きな影響力をもつといわれる世界的ワインコンテスト「IWC (International Wine Challenge)」SAKE部門と、フランスで開かれる唯一の日本酒コンクール「Kura Master」の発表が行われた7月。宮城県の仙台伊澤家 勝山酒造が両コンテストの最高賞を獲得し、史上初の2冠を達成しました。
8月
月桂冠がノンアルコール日本酒テイスト飲料「スペシャルフリー」の販売を開始
佐賀豪雨で4つの酒蔵が浸水被害(外部リンク)
ハワイで日本酒蔵を再建するプロジェクトが開始
月桂冠が発売したのは大吟醸酒テイストのノンアルコール飲料。「お酒を飲めない人も気分を楽しめる」「酔わずにお酒気分を楽しめる」という魅力が浸透すれば、ノンアルコール日本酒が活躍するシーンは今後増えていきそうです。月桂冠は今年4月にリリースした「THE SHOT」でも人気を集めました。
9月
「Amazon Bar」が期間限定オープン
朝日酒造「久保田」がブランドリニューアルを発表
銘酒「久保田」が、2020年5月の発売35周年/会社創立100周年に向けて、大規模なリブランディングを発表しました。ひとつの時代を築いた日本酒が、今後どのように変革していくのか、期待して見守りましょう。
10月
台風19号の影響で、田中屋酒造店をはじめとした各地の酒蔵に被害
宮城県・佐々木酒造店が故郷で酒作りを再開
獺祭NYのブランド名が「Dassai Blue」に決定
2019年10月に日本列島に上陸した台風19号は、強い勢力を保ったまま北上を続け、記録的な大雨による河川の氾濫や堤防の決壊など、各地に甚大な爪痕を残しました。酒蔵も例外ではなく、広い範囲で浸水をはじめとした被害を受けました。
11月
渋谷パルコに「未来日本酒店&SAKE BAR」がオープン (外部リンク)
輸出向けに限り、日本酒製造の新規免許が発行可能に
日本酒スタートアップ「WAKAZE」仏・パリ酒蔵11/15より醸造開始 (外部リンク)
「日本酒の海外輸出を促進するため、輸出のためであれば製造場の国内新設を認める」方向で政府が検討しているというニュースが、2019年11月に発表されました。
今回の法改正を受けて、国内での規制緩和を求める声や、日本酒の海外進出を考えるなら解決すべき他の問題があるという声もありますが、一方で、縮小を続ける国内市場よりも伸びしろのある海外市場での展開を見据え、現段階で規制を撤廃することで日本酒産業に新たな風が吹く可能性も大きく高まりました。
12月
「世界酒蔵ランキング 2019」の速報が発表 (外部リンク)
日本酒ビジネスのオンラインサロン「SAKETIMESサロン」がスタート
SAKETIMESが、2014年のリリースから5年間に渡るメディア運営のなかで蓄積した知見を提供する日本酒ビジネスのオンラインサロンを開設。日本酒ファンをエンパワーメントすることで、日本酒市場への貢献をさらに強めていきます。
日本酒業界の2019年を振り返って
2019年は、輸出向けに限り日本酒製造の新規免許が発行可能になるというニュースをはじめ、日本酒の海外輸出に関わる話題が多い年でした。また、「光明 山田錦」や「現外」の発売などにより、日本酒の高価格帯市場も活況を見せています。
日本酒に国内外から注目が集まるなか、日本酒業界が置かれる環境や構造が大きく変わる兆しも見え始めています。
SAKETIMESはひきつづき、日本酒の良質な最新ニュースを読者のみなさまにお届けしていきます。
(文/SAKETIMES編集部)